研究概要 |
生態系レベルの炭素固定能を評価するには土壌呼吸の測定が不可欠であるが、森林の大部分は無電源地帯であるので、バッテリーで長期連続測定の可能な測器の開発を目的とした。先の科研で開発した6点式CO_2濃度分析装置を骨格として自作した。コントロールボックスで設定した時間になると,ファンと赤外線分析計がスリープ状態から復帰し,5分間のセンサーのランニングを行う。上部シャッターが開放している時,CO_2濃度の測定を1回行い,これを外気の値とする。次にシャッターを閉じ,コントロールボックスからの信号により何分間隔で,何回測定するか信号を受け動作する。その後,上部フイルムを開放して全ての電源を切りスリープ状態に入いる。チャンバーは透明アクリル製のチャンバーで上部,下部が開放になっている。コントロールチャンネル数;6チャンネル,電源電圧;DC12V,消費電力;動作時最大3.5A,待機時2mA,スリープ時間設定タイマー;1時間〜24時間,測定時間設定タイマー;1分〜1時間で可変可能。試験地は北大苫小牧演習林の落葉広葉樹二次林である。動物によって配線を切断されないよう,チャンバー部分を自作の鉄製柵と針金で覆った。呼吸速度はチャンバー閉鎖後の値は捨て,閉鎖後,1分から3分までの時間当たりのCO_2濃度の上昇速度を求め,土壌呼吸速度とした。土壌呼吸速度はほぼ一定の日変化を示し,最大値は約7imolm^<-2>s^<-1>であり,最小値は約5imolm^<-2>s^<-1>であった。得られたデータの精度について評価をするために,ヌルバランスチャンバー法(LI-6400,Li-Cor,U.S.A)を用いて測定した土壌呼吸速度と,試作機について比較検討した。地温約17℃前後の時に,土壌呼吸速度が5imolm^<-2>s^<-1>であり一致していた。今後の課題として,測器の動物害への対策が深刻であり急務である。
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