研究課題/領域番号 |
13556024
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
島田 幹夫 京都大学, 木質科学研究所, 教授 (50027166)
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研究分担者 |
小林 智紀 日本衛生センター, 大阪支社・中央研究所, 所長
服部 武文 京都大学, 木質科学研究所, 助手 (60212148)
角田 邦夫 京都大学, 木質科学研究所, 助教授 (30127104)
浅井 岳人 三共(株), 化学研究所, 上級研究員
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キーワード | グリオキシル酸回路 / シュウ酸 / 木材腐朽菌 / オオウズラタケ / 銅耐性菌 / イソクエン酸リアーゼ / 阻害剤 / 木材防腐剤 |
研究概要 |
本研究の目的は木造家屋などの木材構造部材の微生物劣化、特にシュウ酸を多量に分泌する銅耐性木材腐朽菌(オオウズラタケなど)の代謝機能を解析することによって、その木材腐朽を生化学的レベルで制御しようとするものである。具体的には木材腐朽菌の酵素系阻害反応を利用した新規防腐剤選択システムである。本年度は、シュウ酸生合成が、グリオキシル酸回路とTCA回路と連動している新規なメカニズムであることを発見し、米国科学アカデミー紀要(2001)に掲載されるはこびとなった。また、オオウズラタケのTCA回路は動植物には見られないショートカット型の回路であることを見出した。さらにグリオキシル酸回路のマーカー酵素であるイソクエン酸リアーゼ(ICL)とリンゴ酸合成酵素(MS)は試験した白色および褐色腐朽菌と若干の軟腐朽菌にも分布することを明らかにすることによって、提案したシュウ酸生合成とエネルギー代謝回路との連動機構はかなり一般性が高いものと示唆された。この連動メカニズムの枢軸にはICLが位置付けられることを想定して、その特異的阻害剤としてイタコン酸を用いると、予想通りシュウ酸生合成が阻害されるのみならず、オオウズラタケの生育も制御されることがわかった。阻害剤ターゲットであるICLは通常の健全な動植物には存在せず、結核菌などの病原菌の病原性発現酵素でもあるので、現在ポストゲノムの創薬開発分野で最も注目されているものの一つである。動植物にはバイオハザードを引き起こす可能性はきわめて低く、高選択性が期待される。しかし医薬品の開発と違ってコストパフォーマンスに見合った阻害剤の開発が木材保存・保護の分野では重要である。現在、三共化学研究所のグループと更なる開発研究を展開している。
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