組立て、解体、再利用が容易な高機能木造骨組み架構の開発

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13556025
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 小松 幸平 京都大学, 木質科学研究所, 教授 (20283674)
• 研究分担者: 加藤 泰世 ポラス暮らし科学研究所, 研究員 ; 森 拓郎 京都大学, 木質科学研究所, 助手 (00335225) ; 瀧野 真二郎 京都大学, 木質科学研究所, 助手 (90115874) ; 細川 清司 (有)木構造技研, 主宰(研究職)
• キーワード: スギ製材 / 葉枯ら / 真壁仕様 / 半剛節 / 袖壁 / 小壁 / 腰壁 / 土塗り壁

研究概要

1.小壁・袖壁・腰壁付き実大架構に関する水平せん断性能評価:
スギ天然乾燥材の15cm角を柱、土台とし、横架材には4cm x 24cmのスギ天然乾燥厚板を挟み梁とした軸組架構に、予め左官業者が作業場で作製した壁厚さ7cm、縦横約50cm四方のプレファブ土壁を小壁、袖壁、腰壁として挿入した雑壁入り軸組架構を開発した。試験体は小壁だけのもの(骨組み1)、小壁と腰壁を入れたもの(骨組み2)、小壁と袖壁を入れたもの(骨組み3)、及び、小壁と両袖壁並びに腰壁を入れたもの(骨組み4)の4種類を作製した。軸組と雑壁の接合にはスギ圧縮木ダボ(圧縮後の比重:0.89)を斜めに打ち込んで固定した。長さ2P(182cm)の壁について静的正負繰り返し加力実験を行って、その耐力壁としての性能を評価した。性能はほぼ雑壁の枚数に比例的であり、最も雑壁の多い骨組み4の場合で、見かけの壁倍率は1.3であった。いずれの試験体においても終局破壊は柱-土台を接合しているカシの込み栓の破断であった。この結果より、より高い強度を要求したい場合は、柱脚接合部を何らかの方法で補強する必要があることが分かった。構造性能とはべつに、今回提案したプレファブ土壁を木ダボで軸組架構に組み込んでゆく方法は、組立、解体が容易であり、本研究課題の最終目的によく一致する架構形態であることが確認できた。
2.斜め木ダボ挿入による柱脚接合部の補強法の開発
1.で開発した雑壁入り軸組架構の柱脚接合部は、一辺18mmのシラカシ製込み栓と、厚さ44mm、幅104mmの長柄差しで固定されていた。しかし、軸組架構に雑壁を挿入すると架構架構全体が剛体回転を起こし、柱脚部に大きな引き抜き力が発生した。そこで柱脚を補強する方法として、木ダボを柱側から斜めに挿入し、柱-土台をダボ接合で一体化する方法を考案し、実験を行った。ダボとしては、直径12mmのカエデ材、または1.で供試したスギ圧縮木ダボを用い、一液型ポリウレタン樹脂接着剤で接着する方法を採用した。引き抜き耐力はダボ本数にほぼ比例的であった。ダボを4本挿入すると、約4kNの引き抜き耐力が得られた。剛性、耐力に関しては問題のない数値であったが、靱性に乏しい接合となった。今後の課題として、靱性をいかに確保するかという問題が残された。

研究成果

• [文献書誌] 田淵敦士, 小松幸平: "土壁のせん断変形時における竹木舞の挙動についての実験的研究"第52回日本木材学会大会研究発表要旨集. 186 (2002)
• [文献書誌] 北守顕久, 小松幸平, 片岡靖夫, 加藤泰世: "柱-貫接合部の耐力発現機構に及ぼす楔の役割(2)-パネルゾーンの応力状態-"第52回日本木材学会大会研究発表要旨集. 210 (2002)
• [文献書誌] K.Komatsu, S.Takino, T.Mori, Y.Kato, M.Nakatani, A.Kitamori, Y.Kataoka: "Development of Wooden Semi-Rigid Column-Beam Joints by Utilizing Wedges and Bolts"Proceedings of 4th International Wood Science Seminar. 205-211 (2002)
• [文献書誌] A.Kitamori, K.Komatsu, Y.Kato, Y.Kataoka: "Effect of the Degree of Wedge Fixation on the Rotational Behavior of Beam-Column "Nuki" Timber Joint"Proceedings of World Conference of Timber Engineering 2002. Vol.1. 174-182 (2002)
• [文献書誌] 佐々木貴信, 小泉章夫, ヨルゲン・イエンセン, 飯島泰男, 小松幸平: "木ダボによる構造材の縦継(第2報)ダボ列複層のときの曲げ性能"木材学会誌. 48(1). 23-31 (2002)