研究概要 |
水産物の衛生管理にHACCP制度の導入が進められているが、漁獲から加工場に至るまでの衛生管理はまだ不十分である。漁港内の海水の使用が論議の対象となっているが、港外からの導水設備がない現状では、港から殺菌海水が得られれば,漁港における水産物の衛生管理が向上すると考える。 今回、漁港および漁船における衛生管理に海水の電気分解殺菌法が応用可能かどうか検討した。海水電解装置にはライトクロア(荏原製作所)およびセルフレッシャー(ホクト環境システム)を供試し、次亜塩素酸生成量を残留塩素濃度としてヨウ素滴定法,DPD法あるいはo-トリジン法により測定した。海水および所定濃度の食塩溶液を電気分解し,生成塩素量を測定すると共に殺菌効果を調べた。さらに塩素の残留性を検討すると共に電解水で作成した氷の残留塩素濃度を測定した。また本装置を用いた場合の港内水の殺菌効果,床および使用器具の消毒効果についても検討した。通電時間,電流量および食塩濃度の増加と共に塩素濃度が増加した。塩素濃度0.5mg/L,1分間の処理で供試海水の一般生菌数は99%以上減少した。海水を電気分解した際の塩素濃度はおよそ48時間で半減した。検出限界以下となるには11日を要し、魚槽に注入する海水としても使用可能と考えられた。港内海水の生菌数は塩素濃度0.5mg/L,1分間の処理で99.8%以上減少し、床の生菌数も同濃度,1分間の処理で99.9%以上減少した。器具類では同濃度,30〜120分間の処理で99.9%以上減少した。 サケの定置網漁船の船倉の大きさおよび平均的な漁船のポンプ用量から、実際に使用する場合の要求流量を求め、今回の結果を基に毎時6〜9トンの海水を電気分解し、0.5〜1.0mg/Lの次亜塩素酸を産生する海水電気分解装置を作成した。
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