研究概要 |
漁獲物の衛生管理に電解海水が応用可能かどうかを検討するため,モデルとして選定した北海道東部地域のサケマス定置網漁船の取水量を調査したところ,毎時15t程度であり,電気分解での処理が十分可能な量であった。海水電解装置をユニット型にするか,小型装置を漁船に組み込めば,大規模な設備を整えることなく,常に港内より殺菌海水が得られることが示され,本装置を5漁港に係留されている8隻の船に取り付けた。 本装置を用いて港内海水を有効塩素濃度が0.5mg/Lとなるように設定して電気分解し,1分間処理した場合,一般生菌数および大腸菌数は99〜99.9%以上減少した。また,漁獲物を収容する陸上タンクに電解海水を入れ,漁獲物投入後の残留塩素濃度の消長を観察した。その結果,カラフトマスを20尾投入すると,有効塩素濃度は0.76mg/Lから0.12mg/Lに減少し,塩素が速やかに消費された。実際の漁では一度に数百尾を投入するため,有効塩素濃度は漁獲物の投入と同時に検出限界以下となることが容易に推察され,食品への残留の危険性も低いことが明らかとなった.本装置のイニシャルコストおよび処理能力を考慮すると,海水殺菌装置の有力候補と考えられ,温度管理や他の衛生管理対策との相乗効果で,漁獲物の衛生管理の向上につながると考える。
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