研究概要 |
魚類は,資源としてさらに水圏生態系の構成要素として重要な生物グループである。その研究の深化には,卵や稚仔魚を含むあらゆるタイプの試料の種の正確な識別と分類,遺伝的多様性の把握,種内集団(系群)の峻別,分子系統分析などには,DNA塩基配列などの精緻な遺伝的情報が重要かつ不可欠になりつっある。しかし,DNA情報は急速に増大しており,その情報の流通の便を良くすることが強く求められている。 そこで本研究では,上記のような目的にふさわしい情報源であることが明らかになっているミトコンドリアゲノムを取り上げ,有用性の高い「魚類のミトコンドリアゲノム・データベース」を構築することを目指す。この目標達成のために,今年度は,1)種々の魚類標本の入手を図り,国内および国外から新たに約250種の標本試料を入手した。2)われわれが開発したロングPCRと魚類ユニバーサルプライマーを活用する方法を用いて,新たに約50種のミトコンドリアゲノムの全塩基配列を決定した。また,約100種について,ミトコンドリアゲノムの部分配列を得た。3)得たDNAデータの検証可能性を維持するために,用いたDNA試料と魚体標本の国立科学博物館ないし千葉県中央博物館への登録を進めた。4)試料標本のデータベースおよびDNA塩基配列データベースの基本デザインを検討した。 次年度には,さらに標本とDNAデータの収集を図るとともに,試料標本のデータベースおよびDNA塩基配列データベースのデザインをさらに改良し,それらの試用を始める予定である。
|