研究概要 |
水域生態系の重要構成要素である魚類は,資源生物としてもきわめて重要なグループである。この魚類には,多様な系統に属する2万5千もの種が存在しており,卵や稚仔魚を含むあらゆるタイプの試料の種の正確な識別と分類,遺伝的多様性の把握,種内集団(系群)の峻別,分子系統分析などに,各種のDNA塩基配列情報が重要かつ不可欠になりつつあり,急速に増大するDNA情報を使いやすい形で整理・蓄積することが強く求められている。 そこで本研究では,種々の面から有用性の高い情報源であることが明らかになっているミトコンドリアゲノムを取り上げ,「魚類のミトコンドリアゲノム・データベース」を構築することを目指す。この目標達成のために,プロジェクト2年目にあたる今年度は,1)国内および国外からさまざまな系統を代表する約100種の貴重な標本試料を新たに入手し,2)確立したロングPCRと魚類ユニバーサルプライマーを活用する方法を用いて,それらのミトコンドリアゲノムの全塩基配列を決定した。加えて,同ゲノムの部分塩基配列を約200種について得た。3)魚体標本は引き続き,国立科学博物館ないし千葉県中央博物館への登録を進めた。そして,4)前年度に設計した基本デザインに従って,「魚類のミトコンドリアゲノム・データベース」の暫定版を作成した。プロジェクト最終年度の次年度には,さらに標本とDNAデータの収集を行ってこのデータベースの充実を図るとともに,データベースの試用を通じてその完成を目指す。
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