研究概要 |
脂肪蓄積調節遺伝子をマーカーとして、脂肪細胞の増殖を抑制する作用を持つ機能性栄養素・抗体をスクリーニングし、鶏脂肪蓄積抑制因子を同定して、家畜用抗肥満ワクチンと安全な低脂肪食肉生産システムの開発を目指した応用研究を行なう。本年度は、脂肪蓄積調節遺伝子の同定と家畜用抗肥満因子のスクリーニング、およびその毒性試験を行なった。 (1)鶏前駆脂肪細胞の分化制御遺伝子および分化マーカー遺伝子の同定 哺乳動物における脂肪細胞分化制御因子として同定されている転写因子および分化マーカーのmRNA発現を、分化を開始した鶏培養脂肪細胞で経時的に観察した。鶏脂肪細胞の分化過程において、PPARγのmRNA発現は余り変動しなかったのに対して、C/EBPαの発現変動が特異的であった。また、リポプロテインリパーゼ、aP2およびVLDLreceptorのmRNAが鶏脂肪細胞の分化マーカーとして使用できることが確認された。 (2)鶏前駆脂肪細胞の分化誘導因子の検索 鶏前駆脂肪細胞の増殖を抑制し、分化を進行させる因子を検索した。鶏前駆脂肪細胞培養系では、哺乳動物では必須ではない脂肪酸(FA)を添加しなければ増殖を抑制することができなかった。また、Insulin(Ins)、Dexamethason(DX)および3-isobutyl-l-methylxanthine(IMX)が鶏前駆脂肪細胞の増殖を抑制するために有効であることが示された。現在も、さらに有効な因子を検索中である。 (3)鶏前駆脂肪細胞増殖抑制因子(分化誘導因子)の安全性の確認 (2)で有効であると推測された各因子(FA, Ins, Dx, およびIMX)および分化の進行を活性化すると推測されたbiotinを孵化直後のヒナの腹腔内に投与して、その毒性試験を行なった。その結果、各因子0.5mg/birdの量までであれば、体重低下などの顕著なストレス応答を引き起こさないことが明らかとなった。
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