研究課題
A.肉質との連鎖に関する解析1.前年度に、バンド3欠損症原因遺伝子異常保因と肉質との連鎖について、脂肪酸不飽和度との関連性が示唆された。これに関してさらに詳細に検討した結果、直接の連鎖の存在は否定された。腎尿細管形成不全症(CL-16欠損症)についても明確な連鎖は認められなかった。さらに、両遺伝子とも近傍領域における直接肉質に関連すると考えられる遺伝子の存在は明確ではなかった。B.疾患分子病態の解析上記のように、疾患遺伝子異常と産肉形質の直接の連鎖が否定されたことは、疾患病態が産肉形質のうえからは良好な効果をもたらす可能性が示唆するものであり、詳細な分子病態の解明が今後の育種戦略策定に必須となる。1.バンド3欠損症については、バンド3導入培養細胞を用い、この細胞における細胞内pHの低下が生じる(細胞内酸性化に機能する)ことをとおして細胞外液pH変化を生じることを実証した。したがって、バンド3の欠損、あるいは部分欠損は体液の酸塩基平衡を酸性化に傾け、体細胞代謝に影響するものと考えられる。2.CL-16欠損症については、そのバリア機能を中心に検討した。MDCK細胞でCL-16発現系を構築し、その局在と傍細胞輸送への影響を、蛍光抗体法、電気抵抗測定で解析した。CL-16は細胞膜の細胞同士が隣接する部位、特にタイトジャンクション領域に分布し、発現量増加に伴い、培養細胞モノレイヤーの電気抵抗値は増加した。予想に反し、^<45>Caの透過性(傍細胞輸送)はCL-16の発現によって低下した。牛腎尿細管各領域についてCL分子種の同定を行ったところ、TAL領域にはCL-16とともにCL-3の存在が認められた。MDCKでは生じないCL-16とCL3とのヘテロマー形成がCaに対する選択的透過性をもたらすものと考えられ、その実証のための実験を継続している。
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