研究概要 |
本研究の目的は、最近我々が確立した狂犬病ウイルスのリバースジェネテックス(逆遺伝学)の手法を用いて、これまでにない高い免疫原性と安全な画期的な狂犬病不活化経口ワクチン製造株の創世に係わる基礎情報の確立と、それに基づいたワクチンの実用化を目指したものである。その結果、以下の成果が得られた。 1.日本の現行動物用ワクチン株の病原制御アミノ酸領域を強毒株と弱毒株の遺伝的キメラウイルスの病原性を基に特定した(Microbiol.Immunol.,2001;J.Virol.,2001;J.Neurovirol.,2004)。 2.従来のワクチニアウイルスを使わずに組換え狂犬病ウイルスを効率よく回収するT7RNAポリメラーゼ恒常発現細胞系(BHK/T7-9)を確立した(Microbiol.Immnol.,2003)。 3.BHK/T7-g細胞にM蛋白質発現プラスミドを導入し、リバースジェネテックスにより、M遺伝子欠損ウイルスを効率よく回収した。M遺伝子欠損ウイルスは現行ワクチンのRC-HL株より免疫原性および安全性の高いことが確認された(第51回日本ウイルス学会、2003)。 4.免疫原性を向上させるためにG遺伝子を二重に、あるいは3'末端側に配置換えした5変異ウイルス(3'-N-P-M-G-G-L-5,;3'-G-N-P-M-G-L-5';3'-G-N-P-M-L-5';3'-N-G-P-M-G-L-5';3'-N-G-P-M-L-5')を構築し、G蛋白質発現の増強を確認した(第137回日本獣医学会で発表、2004)。 以上、逆遺伝学的手法により遺伝子を配置換え、組換えあるいは欠損させた様々な変異狂犬病ウイルスを世界に先駆けて創出した。現在、これらの創出したウイルスの培養細胞における増殖性、マウスにおける免疫原性および安全性を調べている。
|