研究課題/領域番号 |
13556056
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 雄二 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (30183619)
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研究分担者 |
種田 英孝 日本製紙, 研究開発本部, 技術調査役(研究職)
新谷 博幸 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (30282693)
飯塚 尭介 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30012074)
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キーワード | イナワラ / パルプ / シリカ / リグニン / バイオマス |
研究概要 |
イナワラにはシリカが約20%程含まれており、イナワラをパルプ原料として用いる上で様々なトラブルを引き起こす。このトラブルの主要なものは、蒸解排液中にシリカが溶出するために薬液の回収が困難になる、ということである。この問題を解決するために、脱リグニンを中性〜弱アルカリ性で行うことによって蒸解排液中へのシリカの溶出を最小限にとどめ、その後、脱リグニンしたイナワラ、からアルカリによってシリカを溶出する、という2段階の蒸解法を考案した。 このような脱リグニン法として酸素・弱アルカリ(酸素・亜硫酸ソーダ脱リグニン、酸素・アンモニア)脱リグニンを試み、酸素・水酸化ナトリウム脱リグニンと比較した。ここで酸素を併用したのは、亜硫酸ソーダあるいはアンモニア単独の脱リグニンでは、シリカの溶出は押さえられるものの、肝心の脱リグニンが効果的に進行しないためである。水酸化ナトリウムを用いると酸素の有無にかかわらず脱リグニンは効果的に進行するがシリカの大部分も溶出してしまうのに対し、酸素・亜硫酸ソーダ、酸素・アンモニアによる脱リグニンでは、脱リグニンが95%まで達した時点でも、シリカの約70%程がパルプ中に保持された。酸素・弱アルカリ法の両者を比較すると、酸素・亜硫酸ソーダではヘミセルロースの保持率が高い結果として炭水化物保持率が高いという結果が得られた。これらのことより、酸素・亜硫酸ソーダによる脱リグニンが、イナワラの脱リグニン法として適切である、と結論した。 なお、この脱リグニン法をブナ材に対して適用したところ効果的な脱リグニンが達成できなかったので、イナワラのリグニンは、その存在形態が樹木とは大きく異なっていることが示唆された。
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