研究課題/領域番号 |
13556056
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 雄二 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (30183619)
|
研究分担者 |
種田 英孝 日本製紙, 研究開発本部, 技術調査役(研究職)
新谷 博幸 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (30282693)
飯塚 堯介 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30012074)
|
キーワード | リグニン / イナワラ / バイオマス / 化学パルプ / オゾン |
研究概要 |
イナワラのアルカリ蒸解(脱リグニン)反応は、通常の木材に比べ著しく反応条件が温和な第1フェーズと、通常の木材と同程度の条件による第2フェーズに分けることができる。前年度までに行った研究において、第1フェーズにおいて最大で80%ほどの脱リグニンが可能であることがわかっている。このことは第1フェーズで除去されるリグニンが、実は、リグニン以外の抽出成分を多量に含んでいるのではないか、ということを想定させる結果であった。そこで本年度は、第1フェーズで除去されるリグニンが、構造上、木材リグニンとどのように異なるのかと言う点を明らかにすることを目的とした。80%含水エタノールあるいは希アルカリ水溶液を用いた抽出によってイナワラを、次に述べる分析に供し、抽出前のイナワラと比較することによって、これらの方法で抽出されるリグニン構造についての知見を得た。 オゾン分解法によるエリスロン酸・スレオン酸の収量(リグニン中の主要構造であるβ-O-4構造の量に対応)、ニトロベンゼン酸化によるバニリン・シリンガアルデヒドの収量(リグニンの非縮合型構造の量に対応)、および、メトキシル基定量によるヨウ化メチルの収量(メトキシル基を有するリグニン型の芳香核構造の量に対応)は、いずれも、クラーソンリグニン当りの収率で比較すると、抽出前の試料のほうが抽出後のそれよりも高かった。これらの指標は、いずれも、クラーソンリグニンとして定量される"リグニン"のリグニンとしての純度を示すと考えられるので、以上の結果は、80%含水エタノールあるいは希アルカリ水溶液によって容易に抽出される区分のほうがむしろ、木材リグニンに近い構造を有していることを示す。
|