研究概要 |
【目的】高齢者に対してウォーキング以上の持久性運動負荷や筋力トレーニングの必要性が指摘されているが、そのテーマに関する縦断的研究は少ない。そこで、我々は高齢者153名を対象に、個別、持久性、筋力トレーニング処方を行い、その効果を判定した。 【方法】「松本市熟年体育大学」の受講者(153名、男性39名、女性114名)を対象に、平成13年6月より平成14年2月までの9ヶ月間、持久性および筋力トレーニングを実施した。トレーニング効果の判定は、トレーニング参加目標(週1回)の70%以上参加者54名(男性14名、女性40名)について、トレーニング前(5月)、中(11月)、後(2月)に実施した。効果判定項目は、6分間歩行、50メートル歩行、等尺性・等速性下肢筋力、自転車エルゴメータによる漸増負荷テストである。なお、歩行効率の指標として、携帯型運動量連続測定装置(Active Tracer, GMS社製)を腰背部に装着し、50メートル歩行中の加速度から、総力積に対する前後(Ix/Itotal、)、左右(Iy/Itotal)、上下方向の力積比(Iz/Itotal)を算出した。さらに、好気的運動能は、漸増負荷テスト時の心拍数(HR)/wattsで評価した。 【結果】9ヶ月間のトレーニング後、好気的運動能、6分間歩行距離、歩幅、最大歩行速度、等尺性および等速性下肢筋力のすべてで有意な増加が認められた(P<0.05)。また、横断的解析により下肢筋力は最大歩行速度と好気的運動能と有意な正相関を示したが(P<0.0001)、トレーニング後にはその回帰係数に沿って各個人のそれぞれの測定値が有意に増加した(P<0.01)。持久性・筋力トレーニングにより歩行中のIx/Itotal(P<0.0001)およびIy/Itotalは増大(P<0.01)したが、Iz/Itotalは逆に減少し(P<0.0001)、歩行効率の上昇が示唆された。 【結論】高齢者を対象とした週1回の個別運動処方によって、1)下肢筋力、好気的運動能および歩行速度が増大すること、2)上下方向の力学的エネルギーの散逸を減少させることにより歩行効率の向上することが明らかとなった。
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