C型肝炎ウイルス(HCV)は慢性肝炎および肝がんの原因ウイルスであるが、ウイルスを培養細胞などで効率よく増殖させることができないためにウイルス複製を標的にした抗ウイルス剤の開発が困難である。そこで、この点を克服するために試験管内で合成したウイルスゲノムRNAを培養細胞に導入し、それをもとにしてウイルスゲノムが複製増殖する系の開発を目指した。HCVゲノムとしてはこれまでに培養細胞MT-2での感染が証明されているものを用いた。HCVを感染させたMT-2細胞から総RNAを抽出し、RT-PCTにてウイルスゲノムDNAを単離した。このDNAをもとにして、ウイルスゲノムレプリコンを作成した。選択薬剤としてネオマイシン耐性遺伝子を導入したものを構築し、それを培養細胞に導入することにより、自己複製可能なHCVレプリコンを得た。ウイルスゲノムの複製は細胞あたり数千コピーと推定される。本細胞を用いてウイルス複製におけるインターフェロンの効果を調べた。インターフェロン100ユニットを加えた細胞では1週間後にレプリコン量は1000分の1に低下した。10ユニットの添加でも徐々にレプリコン量は低下した。リバビリンの添加によってもウイルス量の減少は見られなかった。現在このレプリコンをさらに改良しているが、この系は新規の抗HCV剤の開発に有用であるばかりでなく、現在使用されている抗ウイルス剤の評価にも有用であると期待される。
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