2001 年度実績報告書

ポルフィリン系薬剤の毒性評価法確立および低毒性抗癌剤の開発

研究課題

研究課題/領域番号	13557028
研究機関	北海道大学
研究代表者	藤田博美北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (60142931)
研究分担者	五十嵐和彦広島大学, 医学部, 教授 (00250738) 柴原茂樹東北大学, 医学系研究科, 教授 (70206142) 佐藤治男株式会社佐藤薬学研究所, 所長(研究職)
キーワード	ヘム / ポルフィリン / 金属 / Bach1 / 白血病発症 / NFE2 / 造血細胞分化
研究概要	本研究課題におけるポルフィリン系薬剤の毒性評価法確立について、特にポルフィリン誘導体の代表であるヘム(鉄プロトポルフィリン)に焦点を絞った研究を行っている。特記すべき今年度発表した成果としては、ポルフィリン系薬剤の毒性発現に繋がる可能性もある、高等動物で初めて見つけた鉄プロトポルフィリンによる制御を受ける転写調節因子Bach1の機能調節機構の解析が上げられる。本因子は調節性ヘムの増加によりDNA結合活性が低下し、シスエレメントが例えば造血系転写因子であるNFE2に対してオープンになること、そのことによって正常な細胞分化などが引き起こされることが明らかになった。このことはチトクロムP450を介して活性化される環境因子や薬物においてすらも金属プロとポルフィリンを介した毒性発現機構が関与する可能性を示している。例えば、近年各地で汚染が問題となっているトリクロロエチレンの毒性作用のうち白血病発症というメカニズムが不明であった病気についても、既に1984年に我々が発見したように、本化学物質が調節性ヘムを減少させることが鍵を握っている可能性が強く示唆される。即ち調節性ヘムの減少が、本来なら分化に伴ってシスエレメントから離脱しなければならないBach1をシスエレメントに結合した状態のまま留める結果となり、このことが造血系細胞の正常な分化を阻害する可能性が高い。こうした造血細胞分化の阻害はしばしば前白血病状態である骨髄異形成症候群でも認められている。こうした病態解析は一方では転写因子を介したポルフィリン系薬剤の毒性評価に重要であることを示すと同時に、白血病転化を防ぐと云う機能薬剤の開発において金属ポルフィリンの解析が重要であることも示している。この点から我々は、本機能分子の各種金属プロトポルフィリンによる調節機構の解析を進めており、5種類の金属ポルフィリンのうち鉄ポルフィリンと同様の機能を有するもの、あるいは逆の機能を有するものなどが明かとなり始めている。

研究成果
(7件)

すべてその他

すべて文献書誌 (7件)

[文献書誌] K. Ogawa, et al.: "Heme mediates de-repression of Maf recognition element through direct binding to transcription repressor Bach1"EMBO J. 20. 2835-2843 (2001)
[文献書誌] Y. Yasuda, et al.: "Inhibition of erythropoietin signalling destroys xenografts of ovarian and uterine cancers in nude mice"Brit. J. Cancer,. 84. 836-843 (2001)
[文献書誌] A. Oda, et al.: "Calpin is a STAT3 and STAT5 protease"Blood,. 99. 1850-1852 (2002)
[文献書誌] K. Ogawa, et al.: "Heme-regulated transcription factor Bach1"J. Health Sic.,. 48. 1-6 (2002)
[文献書誌] H. Fujita, et al.: "Lead, Chemical Porphyria, and Heme as a Biological Mediator"Tohoku J. Exp. Med.. in press. (2002)
[文献書誌] H. Fujita, et al.: "Regulatory heme and trichloroethylene intoxication : A possible explanation of the case of "A Civil Action""Environ. Health Prevent. Med.. in press. (2002)
[文献書誌] 竹谷茂、ら: "内海耕造・井上正康編、ミトコンドリアとヘム・鉄代謝、「新ミトコンドリア学」"共立出版. 48-55 (2001)

2001 年度 実績報告書

ポルフィリン系薬剤の毒性評価法確立および低毒性抗癌剤の開発

研究代表者

藤田 博美 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (60142931)

研究成果

[文献書誌] K. Ogawa, et al.: "Heme mediates de-repression of Maf recognition element through direct binding to transcription repressor Bach1"EMBO J. 20. 2835-2843 (2001)

[文献書誌] Y. Yasuda, et al.: "Inhibition of erythropoietin signalling destroys xenografts of ovarian and uterine cancers in nude mice"Brit. J. Cancer,. 84. 836-843 (2001)

[文献書誌] A. Oda, et al.: "Calpin is a STAT3 and STAT5 protease"Blood,. 99. 1850-1852 (2002)

[文献書誌] K. Ogawa, et al.: "Heme-regulated transcription factor Bach1"J. Health Sic.,. 48. 1-6 (2002)

[文献書誌] H. Fujita, et al.: "Lead, Chemical Porphyria, and Heme as a Biological Mediator"Tohoku J. Exp. Med.. in press. (2002)

[文献書誌] H. Fujita, et al.: "Regulatory heme and trichloroethylene intoxication : A possible explanation of the case of "A Civil Action""Environ. Health Prevent. Med.. in press. (2002)

[文献書誌] 竹谷 茂、ら: "内海 耕造・井上 正康編、ミトコンドリアとヘム・鉄代謝、「新ミトコンドリア学」"共立出版. 48-55 (2001)

2001 年度実績報告書

藤田博美北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (60142931)

[文献書誌] 竹谷茂、ら: "内海耕造・井上正康編、ミトコンドリアとヘム・鉄代謝、「新ミトコンドリア学」"共立出版. 48-55 (2001)