NF-kBは様々な炎症性サイトカインにより活性化される転写因子で、炎症性病態に中心的な役割を果たしている。NF-kBは通常細胞質内でをの阻害タンパク質であるIkBと複合体を形成して不活性型で存在しているが、サイトカイン刺激に反応してIKKが活性化すると、IkBがリン酸化を受けて分解が誘導されNF-kBが核内に移行して機能すると考えられている。本研究ではNF-kB活性化経路を明らかにし、これら制御因子を阻害する新規抗炎症剤を開発する目的で行った。IKKを上流から活性化するNAKをバイトとして酵母two-hybrid法を行ったところ、NAKに結合する新たな因子NAP1を同定した。NAP1はNAKを活性化する機能を持ち、RNAi法を用いた実験からNAPはNAKを活性化することでTNF-α刺激によるアポトーシスに対して阻害効果を持つことが明らかとなった。さらにNAKあるいはIKKを標的とした新規阻害化合物を合成した。IKKが天然型PGAにより試験管内で阻害されることを利用して、PGA誘導体を多種類化学合成してIKKおよびNAKに対する阻害効果を測定した。IKKに対してはPGA1の15位の水酸基を脱水した15d-PGA1が非常に強い阻害効果を持ち、NAKに対してはIKKとは異なり15-dPGJ2のエステル体やモノエノン体も効果を示し、7-PGA1やent-7PGA1が強い阻害効果を示した。今後合成した化合物のRI標識体を用いてシード化合物の体内動態を調べるとともに、個体レベルでの炎症モデルを用いた解析を行う予定である。
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