研究概要 |
本疾患の臨床像の詳細を検討した結果、高齢者男性に好発し、閉塞性黄疸を初発とすることが多く、臨床的に膵癌との鑑別が重要で、血清IgG4測定は鑑別に有用であった。膵管像の経過の検討から、本疾患の病態は多様であり多彩に変化しうることが明らかとなった。また血清学的所見については、非特異的なγグロブリン、IgG,抗核抗体等の上昇を認めるものの、SS-A,SS-B、抗ミトコンドリア抗体など疾患特異的な自己抗体の出現はほとんど認められなかった。シェーグレン症候群の標的抗原と報告されているαフォドリンとの関連を検討した結果、硬化性胆管炎合併例で陽性例を認め、膵外病変の合併等に関与している可能性が考えられた。 本疾患には種々の膵外合併症が報告されており、今回Gallium scintigraphyの検討で肺門部病変の合併が確認され、また後腹膜線維症の合併も確認された。今後は本疾患を全身疾患の視点よりmultifocal idiopathic fibrosclerosis(MIF)のような包括的な疾患概念として捉えるべきか明らかする必要がある。本疾患のHLA領域の疾患感受性遺伝子がDRB1*0405-DQB1*0401 haplotypeであることが明らかとなった。本疾患ではこれらclass II抗原で呈示されるペプチド抗原がTcellの活性化をきたし、発症にいたると考えられる。 本疾患の患者血清に特異的に反応する25kDaの蛋白質を検出し、superoxide dismutase 2(SOD2)が同定された。SOD2は、いくつかの自己免疫疾患で検出される自己抗体に対する抗原であると考えられており、自己免疫性膵炎においても対応抗原である可能性は否定できない。しかしながら、リコンビナンントSOD2は患者血清とは反応せず、今後、培養細胞を用いてリコンビナント蛋白質を発現させ糖鎖との反応性を明らかにする必要がある。
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