研究課題/領域番号 |
13557048
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
森脇 久隆 岐阜大学, 医学部, 教授 (50174470)
|
研究分担者 |
奥野 正隆 岐阜大学, 医学部・附属病院, 講師 (10204140)
大森 正英 東海女子大学, バイオサイエンスセンター, 教授 (30278212)
四童子 好広 県立長崎シーボルト大学, 看護栄養学部, 教授 (00111518)
白鳥 義宗 岐阜大学, 医学部, 助手 (20313877)
|
キーワード | レチノイド / 肝癌 / 化学予防 / クローン除去 / 核内受容体 / アポトーシス / 分子標的 |
研究概要 |
我々はレチノイドによる肝発癌抑制をテーマとして研究を進めてきた。その結果1996年に非環式レチノイドが根治療法後の二次肝癌の発生を有意に抑制できることを、1999年には肝癌の発生を抑制するのみならず患者の生命予後をも改善することを発表し得た。その作用機序をさらに明らかにするため、分化誘導とアポトーシス誘導機序の検討を進めている。本年度の重要な成績は、以下の通りである。 1) この非環式レチノイドは、単一の核内受容体にリガンドとして結合するのではなく、かなり広範囲の核内受容体と結合することが明らかとなった。この核内受容体は細胞特異性があり、そのレチノイドとの反応性にも細胞により違いが認められた。これは分化誘導やアポトーシス誘導機序を考える上でも、今後の薬剤デザイン上も重要と考えられた。2) 関連する核内受容体のひとつであるレチノイドXレセプターの特定部位(260番目のセリン残基)のリン酸化の状態や、代謝の速度に差があることが明らかになり、これが肝細胞の癌化と強く結びついている可能性が示唆された。3) 非環式レチノイドとインターフェロン(IFN)-βを加えることにより相乗的にアポトーシスの誘導を高めることが出来る。この時、非環式レチノイドによりIFN受容体の膜表面への表出、細胞内シグナルであるSTAT1の量ならびにその活性、さらに下流にある2,5AS活性を上昇させることを認めた。 これらの知見は、肝癌細胞内で変化を来した核内受容体分子を標的として、そのリガンドである非環式レチノイドを用いることにより、アポトーシスからすり抜けた癌細胞を再度分化させてアポトーシスに導くという、大きな発癌予防の戦略を支持するものとして極めて重要と考えられる。
|