研究概要 |
(1)CT上、肺気腫病変の指標としてLAA%(低吸収領域の肺野全体に対する面積比)、気道病変の指標として右B^1のWA%(気道壁の気道全体に対する面積比)を算出した。IOS (Impulse Oscillation Method)で測定された中枢気道抵抗を反映すると考えられるR35が高値をとる群(HighR35)と低値をとる群(LowR35)に群分けた。フローボリューム曲線上の閉塞性障害の指標には2群間に有意な差を認めなかった一方で,肺拡散能はHighR35群が有意に高値を示した。LAA%はHighR35群が有意に低値であった。R35とWA%の間に有意な正の相関を認めた。この結果、HighR35群がLowR35群に比較して有意に気腫病変が軽度であると考えられた。気道病変の指標としてのWA%は,R35と有意な正の相関を示し,R35が気道病変を反映する可能性が示された。 (2)肺気腫を自然発症するKlothoマウスの肺病理標本を用いて、従来使用されている指標であるLM (mean linear intercept)、D I (Destructive Index)とフラクタル性とから気腫性変化を検討した。7週齢のマウスにおける、kl^<+/+>群のLmはkl^<-/->群より有意に低かった。またDIに関しては、kl^<+/+>群はkl^<-/->群より有意に小さかった。次に気腔のサイズと分布に関して行ったフラクタル次元の検討では、各群において、良好なフラクタル性の存在を示し、乗数D値はkl^<+/+>群に比べて、kl^<-/->群においては有意に低下を認めた。Klothoマウス肺気腫病変は、成因は不明であるものの、病理標本において気腔の分布にフラクタル性が存在したことは、このモデルマウス肺がヒトの肺気腫と同様な変化を呈し、肺気腫の形態学的モデルとしては適当であることを支持すると考えられる。さらにCOPD患者と同様にD値の低下を認めたことは、フラクタル次元の低下は肺構造の複雑性が低下していることを示す。CTでの検討ではLAAのclustering、すなわち末梢気腔の増大示したと考えたが、今回の検討でも、病理所見にて明らかであり、病理標本におけるD値の低下は妥当である。マウス肺におけるフラクタル解析による気腫病変の評価は、マウスにおける肺機能変化を鋭敏に示している可能性が強い。今後、同一系における加齢変化、機能変化を検討していく必要がある。
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