研究概要 |
CT画像を用いて検出した慢性閉塞性肺疾患(COPD)の気道病変優位群の治療戦略を、気腫病変優位群との対比において検討した。 私共は、CT画像を用いて、COPDにおけるphenotypingを検討してきた。すなわち、低吸収領域(LAA)の分布や全肺野に対する面積比(LAA%)が、肺気腫病変の指標となり、右B1気管支壁厚の気道断面に対する面積比(WA%)が気道病変の指標となりえること、またこれらの指標を用いてCOPDを機種病変優位群と気道病変優位群に弁別できる可能性を報告してきた。そこで、このphenotypingがどのように臨床に役立つかを検討した。まず、肺気腫病変における2つの遺伝子多型について検討した。1つは、COPD発症の危険性および重症度とGcグロブリン遺伝子1Fアレルとの関連性である。その結果,Gc-globulin 1FアレルがCOPD発症,ならびに肺機能における年間1秒率低下,CT所見上での気腫病変の強さに関与する可能性が示唆された。本研究は、二つの角度からの臨床指標(肺機能低下速度および画像による気腫性病変)を評価することにより,遺伝多型とCOPD発症の関連性をみた点が特徴である。さらに、MMP-9のpromoter-geneのTアレルを持つ群において、上葉に優位である小葉中心性肺気腫の発生が多いことを示した。次に気道病変の程度を示すWA%と気道可逆性の関係を評価した。イプラトロピウムとサルブタモールの吸入後30分における1秒量の改善率は、気腫病変の指標であるLAA%とは相関を示さず、気道病変の指標であるWA%と有意の相関を示した、気道病変有意群が気管支拡張療法の良い適応であることが示唆された。これらの一連の研究は、CT画像によるCOPDのphenotypingが、COPDの病態の解明やtailor made治療につながる可能性を示し、第42回ベルツ賞受賞(2005年度)の業績の1部となった。
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