研究概要 |
平成15年度には,昨年度に引き続き,M8アナライザー(IGEN社,UK)を用いたハイブリドーマのスクリーニング法の感度をさらに高め,かつ,より短時間での測定を可能にするための改良を行うと同時に,複数の癌細胞株で免疫したBALB/cマウス数種類とマウス骨髄腫細胞を細胞融合することにより,新たなモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの樹立を操り返し行った. M8アナラィザーは,ルテニウム錯体に電流を流し発光させることを応用した電気化学発光免疫測定法(electrochemiluminescence immunoassay:ECLIA)を行うための機器であり,これに私たちが以前より開発し報告してきた逆間接サンドイッチ抗体法(reversed indirect sandwich assay:RISA)を組み合わせたスクリーニング法を確立することにより,酵素抗体法を使用したRISAであるRI-ELISAの検出限界に比べ、約1,000倍の低濃度まで検出することを可能にし、測定時間は約6分の1に短縮することができた。 このスクリーニング法を用いることで,肺癌患者あるいは間質性肺炎患者のプール血清に対して強いシグナルを示すマルチクローナル抗体は,16種類得られた.この中から,非特異的な反応を示す抗体を除きクローニングを行ったが,元来ハイブリドーマは増殖力が弱く不安定な細胞であることが多いため,クローニング,凍結・解凍の操作の過程で,多くのハイブリドーマが抗体産生能を失ったり,死滅したりした.このため,最終的に樹立されたモノクローナル抗体はわずかとなったものの,オリジナルのKL-6とは異なるエピトープを認識している抗体の存在が推測された. ハイブリドーマのスクリーニング法確立に予想以上の多大な時間を要したものの,現在,極めて高感度でしかも短時間に測定することができるアッセイ系を確立することができた.これにより今後は,細胞融合を繰り返し継続し,肺癌患者血清・間質性肺炎患者血清に対して,KL-6よりもさらに高い感度・特異度で反応するモノクローナル抗体を樹立していく予定である.
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