研究課題/領域番号 |
13557064
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
循環器内科学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 裕 京都大学, 医学研究科, 助教授 (40252457)
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研究分担者 |
仁藤 新治 田辺製薬株式会社, 創薬研究所・先端医学ユニット, 主任研究員
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研究期間 (年度) |
2001 – 2002
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キーワード | 再生医療 / ES細胞 / VEGF / 霊長類 / 内皮細胞 / 血管平滑筋細胞 / DNAマイクロアレイ / Flk-1 |
研究概要 |
21世紀の新しい医学領域として"再生医学"が脚光を浴びている。その中で"血管再生"は現在最もその臨床実践に近い分野として注目されている。最近になり我々は、マウス胚幹細胞(Embryonic Stem Cells ; ES細胞)より内皮細胞と血管平滑筋細胞の双方への分化が可能な、まさに"血管前駆細胞(vascular progenitor cells ; VPC)"と呼びうる細胞の単離同定に成功した。すなわち、血管新生因子であるVEGF(vascular endothelial growth factor)受容体の一つであるFlk1は内皮細胞と血球細胞の分化に必須であることが明らかになっていたが、我々は、Flk1陽性細胞からの血管構成細胞の分化を検討した。マウスES細胞からFlk1陽性細胞を分化誘導し、FACSを用いてFlk1陽性細胞をソーティングし、この細胞に対してそれぞれVEGF及びPDGF-BBを添加することにより、内皮細胞、壁細胞の双方が分化することを発見した。また、Flk1陽性細胞をI型コラーゲンゲル内3次元培養することにより、内皮細胞の管腔形成とその周囲への壁細胞の接着を伴った成熟血管構造の形成が可能であることを示した。更に、Flk1陽性細胞のニワトリ胎仔への移植実験により、Flk1陽性細胞がin vivoにおいても内皮細胞、壁細胞に分化し新生血管の形成に寄与し得ることを明らかにした。しかしながら、我々の知見はマウスES細胞における成績であり、実際の臨床応用を考えた場合、是非とも霊長類での血管前駆細胞の存在の実証とその移植治療への応用の検討並びに、新たな複数の分化誘導因子の同定を要すると考えられる。そこで本研究課題においては、研究代表者伊藤らの有するES細胞由来血管前駆細胞に関する知見の集積並びにFACSセルソーターを用いた血管前駆細胞の純化のノウハウと、田辺製薬(株)の樹立保有する霊長類ES細胞とその維持培養系を融合させ、ES細胞の血管再生医療への実用化に向け、霊長類ES細胞由来血管前駆細胞を用いた血管再生医療の基礎的基盤を検討した。その結果、サルES細胞の未分化維持培養系を確立し、更にFlk1陽性細胞より、内皮細胞と血管平滑筋細胞の双方を分化誘導する技術を開発した。本研究により、サルES細胞における"血管前駆細胞"の分化動態は、我々がこれまで明らかにしてきたマウスES細胞のそれと明らかに異なることが判明した。すなわち、サルES細胞ではフィーダー線維芽細胞上で培養された未分化の状態で既にFlk1を発現しており、この未分化Flk1陽性細胞から血管細胞は分化誘導されなかった。この未分化Flk1陽性細胞をコラーゲンIVの上で8日間培養することで初めて、血管前駆細胞と呼び得る細胞(Flk1+VEカドヘリン-)が分化することを明らかになった。今回の研究においてマウスES細胞とサルES細胞の差異が明らかになったことは、ES細胞の臨床応用研究においては霊長類ES細胞を用いた検討が不可欠であることが示された。また本研究課題においては、ES細胞由来血管前駆細胞を成人生体に移植することで血管構築が可能であるか、また血流改善治療効果を期待できる移植細胞の至適な分化段階は何かについても検討を行った。その結果、マウスES細胞由来血管前駆細胞をex vivoで内皮細胞と血管平滑筋細胞にある程度分化させた後、生体に移植することで、血管を構築し移植部の有意の血流増加を起こすことが可能であることが明らかとなった。この研究成果は、我々の発見したES細胞由来血管前駆細胞の血管再生医療への応用の可能性を示すものである。我々は現在更にヒトES細胞からの血管前駆細胞の同定とその血管再生医療への応用を検討中である。更に我々は、新たな血管分化誘導因子の同定を目指し、マウスES細胞由来血管前駆細胞より内皮細胞及び血管平滑筋細胞の各々の細胞系譜への分化に至る複数の段階における細胞群を個別にかつ大量にソーティングし、それらからRNAを各々回収し、cDNAを調整しDNAマイクロアレイ法を用いて、血管細胞分化に伴う遺伝子発現プロフィールのデータベース化に成功した。
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