研究課題/領域番号 |
13557067
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
金出 英夫 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (80038851)
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研究分担者 |
平野 勝也 九州大学, 大学院・医学研究院, 講師 (80291516)
西村 淳二 九州大学, 大学院・医学研究院, 助教授 (90237727)
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キーワード | 細胞シグナル伝達 / Ca^<2+>シグナリング / 血管平滑筋細胞 / HMG-CoA還元酵素 / BCECF / 〔pH〕i / fura-2 / トロンビン |
研究概要 |
昨年度に試作した『血管内皮・平滑筋の細胞([Ca^<2+>]i)、[pH]i、([Na^+]i)と機能変化の同時連続測定システム』について、その性能を検討したところ、以下の問題点が明らかとなったので本年度はその解決を試みた。例えば、pHセンサーのBCECFは可視光2波長励起(500/450nm)・蛍光(540nm)測光を行う。一方、[Ca^<2+>]iセンサーのfura-2は紫外光2波長励起(340/380nm)・蛍光(500nm)測光を行う。従来のロータリーシャッタを用いて、1、2、4、8、16秒間隔で各励起光シャッタを交代に開閉すると、BCECFの500nm励起光のエネルギーが強すぎて、fura-2の500nm蛍光に迷光となって被るため、[Ca^<2+>]i測定が安定しないことが明らかとなった。これを解決するために、ロータリーシャッタの開閉をさらに32、48、64秒まで可能となるようにコントロールサーキットを改良した。32秒以上のシャッタ間隔によって[Ca^<2+>]iの記録の精度は上がったが、時間分解能が極端に低下した。もっと精度の高いロータリーシャッタの開発が必要である。 本装置の一部を利用して、HMG-CoA還元酵素阻害剤であるsimvastatinの血管平滑筋に対する効果について検討した。simvastatinにはコレステロール低下作用た加えて、血管平滑筋細胞の直接的な増殖抑制作用が知られている。トロンビンは平滑筋の増殖促進作用を有する。培養血管平滑筋細胞にトロンビンを投与すると一過性の[Ca^<2+>]i上昇作用が見られた。simvastatinは用量依存性にこの[Ca^<2+>]i上昇を阻害した。geranylgeranylピロ燐酸はsimvastatinのこの作用を完全に阻止した。farnesylピロ燐酸は部分阻止であった。farnesylピロ燐酸の阻止作用はgeranylgeranyl transferase Iの阻害剤によって阻止された。したがって、simvastatinは蛋白geranylgeranyl化の阻害によって、平滑筋細胞のトロンビン反応性を減弱させることが明らかとなった。この作用はsimvastatinによる平滑筋細胞増殖抑制に関与している可能性がある。
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