研究概要 |
血管を傷つけずに、連続的にその「シグナル伝達・代謝変化・機能変化」を同時観察するには、光学的方法が最も優れている。本研究はその測定システム開発を目標とした。日本分光およびフジトクに開発協力を依頼した。測定システムの概要・仕様は次の通り:(1)蛍光分光器(日本分光CAM-230:九大特注型)3台を並列に配備し、各分光器の励起光出口/石英ファイバ挿入部直前にロータリーシャッタを装着する。コントロールサーキットを用いて、1、2,4,8秒間隔で各シャッタを交代に開閉させ、各分光器の光情報を記録する。(2)オプティカルファイバ(フジトク)は2種を作製した。(a)照射・採光部端は同心円(内円・石英、外円・ガラス)ファイバで、他端を3分光器および3光電子倍増管に独立装着する。(b)照射・採光部端がランダム配置のものである。初年度は、この1号モデルの性能を検討したところ、以下の問題点が明らかとなったので2(最終)年度は改造を試みた。問題点と解決:pHセンサーのBCECFは可視光2波長励起(500/450nm)・蛍光(540nm)測光を行う。一方、[Ca^<2+>]iセンサーのfura-2は紫外光2波長励起(340/380nm)・蛍光(500nm)測光を行う。従来のロータリーシャッタを用いて、1、2、4、8、16秒間隔で各励起光シャッタを交代に開閉すると、BCECFの500nm励起光のエネルギーが強すぎて、fura-2の500nm蛍光に迷光となって被るため、[Ca^<2+>]i測定が安定しないことが明らかとなった。これを解決するために、ロータリーシャッタの開閉をさらに32、48、64秒まで可能となるようにコントロールサーキットを改良した。32秒以上のシャッタ間隔によって[Ca^<2+>]iの記録の精度は上がったが、時間分解能が極端に低下した。今後、もっと精度の高いロータリーシャッタの開発が必要である。 本装置の一部を利用して、血管平滑筋の[Ca^<2+>]iに関する種々の研究を並行して行った。
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