研究概要 |
1.徐放化ヘパリンコーティングステントの再狭窄予防効果:ヘパリンが長時間をかけて徐放化される技術を開発し、これを用いて、ステンレスステント表面にコーティングを行った。この徐放化ヘパリンコーティングステントを、ブタ冠動脈のバルーン傷害後に留置したところ、慢性期の内膜肥厚や血栓形成が著明に抑制され、同ステントの臨床的有用性が示唆された。 2.バルーン傷害後の再狭窄病変に対するナノ治療の開発:動脈硬化病変や悪性腫瘍病変では血管透過性が亢進していることが知られている[EPR(enhanced permeability and retension)現象]。また、バルーン傷害後にも、その後1週間以上にわたり、同部で血管透過性が亢進していることを確認した。ナノテクノロジーを応用して、直径35nmのミセル化ナノカプセル(主成分ポリエチレングリコール)を作成し、この内部に抗癌剤の一つであるアドリアマイシンを含有させることに成功した。 このナノカプセルをラットの頸動脈バルーン傷害後に3回(直後、3・6日後)静脈内投与(0.1,1.0,10mg/kg)したところ、4週間後の再狭窄病変形成が用量依存性に著明に抑制された。対照実験として、同じ用量のアドリアマイシンを単独投与してもこのような病変形成の抑制効果は認められなかった。また、より臨床の状況に近く、前もってバルーン傷害により内膜肥厚病変を作成しておき、同部にバルーン傷害を加えた後に、同様にナノカプセル化した薬剤と単独の薬剤投与の効果を比較検討したところ、単回のバルーン傷害プロトコールよりもさらに有意にナノカプセル化の効果が認められた。また、これらのナノカプセルの投与により、肝臓・腎臓をはじめとする全身の臓器機能には全く障害が認められなかった。 したがって、アドリアマイシン含有ミセル化ナノカプセルが、ヒトにおける冠動脈インターベンション後の再狭窄病変形成の抑制に有用である可能性が示唆された。 3.内皮剥離部位を感知する機能化造影剤の開発:ナノテクノロジーを用いて、現在、内皮剥離部位を自己感知する機能化造影剤を開発中である。
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