研究概要 |
本研究では、中枢神経障害を呈するライソゾーム病であるGM1-ガングリオシドーシスに対する治療の研究を進めている。本年度は、ヒト細胞の遺伝子解析と新しい治療法(ケミカルシャペロン法)の研究を進めた。遺伝子解析は、16エクソンをすべてPCR法で増幅し、エクソン1,4,7,9はSSCP法で解析した後にプラスミドにサブクローニングを行い塩基配列決定を行った。残りのエクソンは直接塩基配列を決定した。その結果、24名の患者の細胞から19種類の変異を同定した。そのうち8種類は新規変異(Y333H, W161G, Q255H, S532G, G178R, F107L, R68W, T500A)であり、残り11種類は既知の変異であった。治療法の研究では、特に日本人の代表的な変異であるR201C異常をもつ細胞株について、より低濃度で効果のある新しい化合物(GalX)の効果の検討を詳細に行った。培養細胞を用いて検討した。その結果、GalXは0.4μMの濃度で最も有効であり、投与4日から8日でもっとも大きな酵素活性の上昇(5倍の活性上昇)が見られた。投与中止後、4日の培養で効果が半減し、8日後には効果がみられなくなった。この細胞株の培養液中に、0.1mg/mlの濃度のガングリオシドを加えた条件下で、0.2μMのGalXを2日間の投与する実験を次に行った。ガングリオシドはFITCラベルコレラ毒素Bサブユニット(CTB)を用いて染色した。その結果GalXを加えた細胞株では、ガングリオシドの蓄積が減少する傾向がみられた。GalXはR201C変異患者に有効な治療薬になると考えられた。来年度は、さらに多くの細胞株への効果を検討し、さらにマウスでの研究を進めて臨床応用を目指す。
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