研究概要 |
アフリカツメガエル卵母細胞に発現させたトランスポーターにより人工アミノ酸である3-[^<123>I]iodo-α-methyl-L-tyrosine (IMT)のhuman L-type amino acid transporter(hLAT)に対する輸送特性を検討した。IMTは、hLATファミリーに属するワイルドタイプのアイソフォームhLAT1,hLAT2のうち前者に高い選択性があることが判明した。この化合物は、マウスによる体内分布の検討から、腎皮質への高い集積性と尿細管分泌阻害剤のプロベネシドによる分泌阻害効果があり、有機アニオン輸送機構への親和性を合わせ持つことが示唆された。この人工アミノ酸は、カイネティクスの検討から天然アミノ酸TyrをしのぐhLAT1親和性があった。hLAT1は、近年血液脳関門を構成する脳の毛細血管内皮細胞にh4F2hcとともに存在することが示されているほか、リンパ球の活性化、ホルモンによる刺激などにより高度に発現が誘導され、さらに腫瘍細胞においても高発現があることから、細胞の需要に応じてアミノ酸を取り込むようにその発現が調節される誘導型のアイソフォームであることが示唆されている。IMTがhLAT1に選択性を有する点は、腫瘍や脳機能とアミノ酸輸送の関りを解明するうえで注目されるものと考えられる。今後、他のシステムへの親和性も考慮に入れたうえで、特定のアイソフォームにスペシフィックな人工アミノ酸分子の開発が期待される。本研究で用いたcDNAは、杏林大学の金井好克らにより提供を受けた。
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