研究概要 |
レコンビナントLimitin蛋白を作製し、Limitin蛋白の性状解析やin vitro, in vivoでの作用の解析を行った。レコンビナントLimitin蛋白作製は、Limitin遺伝子を強制発現したCHO細胞の培養上清をimmunoaffinity chromatographyとion-exchane chromatographyで精製することにより得た。Western blot解析により、Limitinの分子量が約20kDであること、Limitinが糖蛋白であること、Limitin蛋白内にS-S結合を有することを確認した。さらに、Limitinはヘパリン結合能を有し、熱や酸に安定であることを見出した。 レコンビナントLimitin蛋白を用い、IFN-αの作用と比較しながら以下のLimitinの作用を確認した。(1)卵白アルブミンを抗原とするT細胞機能解析系ではLimitinがperforin-granzymeを介した細胞障害性Tリンパ球活性をin vitro, in vivoともに増強する。(2)Limitinがencephalomyocarditis virus, herpes simplex virus, mouse hepatitis virusに対して抗ウイルス活性を示す。(3)Limitinが慢性骨髄性白血病のモデル細胞株(bcr-ab1を遺伝子導入したFDCP-1細胞株)の増殖を著明に抑制する。(4)Limitinの骨髄球前駆細胞や赤芽球前駆細胞の増殖に影響を及ぼさないだけでなく、造血幹細胞や巨核球前駆細胞の増殖抑制作用がIFN-αと比較して軽微である。以上より、LimitinがIFN-αやIFN-βと同様に癌治療効果やウイルス肝炎治療効果が期待できることやIFN-αと比較して骨髄抑制作用が少ないことが確実となった。 免疫組織染色やRT-PCRで生体内におけるLimitin産生細胞について解析した。Limitinの産生細胞は、主に成熟Tリンパ球であり、特に胸腺でLimitin遺伝子発現が高いことを見出した。この結果から、ヒト胸腺由来cDNA libraryがヒト型Limitin遺伝子をスクリーニングする際の有力な候補と考えられた。
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