研究課題/領域番号 |
13557081
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
織谷 健司 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70324762)
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研究分担者 |
門屋 利彦 キリンビール株式会社, 医薬探索研究所, 主任研究員
冨山 佳昭 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (80252667)
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キーワード | インターフェロン / limitin / シグナル伝達 / 遺伝子発現 / 骨髄抑制 |
研究概要 |
新規IFN様蛋白Limitinの産生細胞特定を行なうとともに既知のIFNとの作用の相違をシグナルレベルで解析した。(1)Limitin産生細胞の同定 免疫組織染色にてLimitin蛋白の発現を解析すると、脾臓(Periaortic lymphoid sheath)・胸腺(胸腺髄質)に存在する成熟Tリンパ球や肺・唾液腺の腺細胞が陽性であった。また、胸腺におけるLimitin遺伝子発現は健常時から認められ、他のIFNとは異なりウイルス感染による遺伝子発現増強は認められなかった。以上より、Limitinは、ウイルスの侵入に備えることや免疫状態を調節し腫瘍細胞など危険な細胞を排除することに対して恒常的に(健常時から)生体内で関与していると考えられた。また、胸腺で高いLimitin遺伝子発現が認められる事実から、ヒト胸腺由来cDNA libraryがヒト型Limitin遺伝子をスクリーニングする際の有力な候補と考えられた。(2)LimitinとIFN-alphaの作用の比較 マウス脳心筋炎ウイルス・マウス肝炎ウイルス・単純ヘルペスウイルスの感染に対してLimitinがIFN-alphaとほぼ同等の抑制効果(TCID50:20-30pg)を示すことを明らかにした。抗ウイルス活性を基準にLimitinとIFN-alphaの量を調整し両者の生理活性を比較した結果、LimitinとIFN-alphaはp210 bcr/ablをstable transfectionした血液細胞株(FDCP-1や32D細胞株)の増殖を同程度抑制した。Bリンパ球系や巨核球系コロニー形成を抑制するためには、IFN-alphaと比較して高濃度のLimitinが必要であった。IFN-alphaで認められる骨髄球系・赤芽球系細胞増殖抑制はLimitinでは認められなかった。一方、IFN-alphaと比較して低濃度のLimitinでMHC class I発現を誘導した。このようにLimitinとIFN-alphaでは類似の生理活性を示すが、各々で特徴ある作用を示した。(3)LimitinとIFN-alphaによる骨髄抑制作用に関わるシグナルの解析 Tyk2を欠損させると、LimitinとIFN-alphaのコロニー形成抑制作用(CFU-IL7,CFU-Meg)が消失した。LimitinやIFN-alphaでBリンパ球系細胞を刺激するとDaxx蛋白(増殖抑制に関与)の誘導や細胞内分布変化が認められるが、Tyk2欠損細胞ではDaxx蛋白の変化が消失していた。このように、徐々にLimitinとIFN-alphaによる骨髄抑制作用に関わるシグナルが明らかになってきた。
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