研究概要 |
まず,腫瘍細胞に発現する2D7抗原の発現分布を検討したところ,この抗原は,骨髄腫細胞のみならずT・B細胞リンパ腫細胞や白血病細胞にも高発現している一方で,正常のリンパ球には発現が低いことが明らかとなった。このことから,2D7抗原の発現は腫瘍細胞に特異的で,抗2D7抗体を用いた抗体療法は造血器腫瘍に対する新しい治療法となりうる可能性が示唆された。 次に,リンパ系腫瘍細胞株を用いて2D7抗原の機能について検討を行った。骨髄腫細胞株U266やリンパ腫細胞株Jurkatに2D7抗体を添加し培養したところ,これらの細胞は凝集をおこし,増殖は抑制された。さらに,2D7抗体と2次抗体を用い2D7抗原をクロスリンクしたところ,細胞のアポトーシスが誘導され,2D7抗原は細胞の増殖や生存に重要な役割を有している可能性が考えられた。以上のことから,2D7抗原は抗2D7抗体治療の標的抗原として機能するものと考えられた。 さらに2D7抗原遺伝子を同定するため,骨髄腫細胞株RPMI8226の遺伝子ライブラリーを作製し,direct expression cloning法とimmuno-screening法により遺伝子のクローニングを進めるとともに2D7抗原の発現調節機構を明らかにするため,サイトカインによる2D7発現誘導の解析を試みている。
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