研究概要 |
新しく同定した2D7抗原は,骨髄腫細胞のみならずT・B細胞リンパ腫細胞や白血病細胞などの造血器腫瘍細胞に高発現している一方で,正常のリンパ球には発現が低いことが明らかとなった。このことから,2D7抗原の発現は腫瘍細胞に特異的で,抗2D7抗体を用いた抗体療法は造血器腫瘍に対する新しい治療法となりうる可能性が示唆された。実際,抗2D7抗体の添加により,骨髄腫細胞株U266やリンパ腫細胞株Jurkatの細胞増殖が抑制された。さらに,抗2D7抗体と2次抗体を用い2D7抗原をクロスリンクしたところ,Annexin V陽性細胞の出現などアポトーシス誘導の所見が観察され,2D7抗原は細胞の増殖や生存に重要な役割を有している可能性が考えられた。以上のことから,2D7抗原は抗2D7抗体治療の標的抗原として機能するものと考えられた。 次に,患者由来の腫瘍細胞と正常細胞に及ぼす影響について検討した。骨髄腫患者より採取した骨髄細胞の培養中に抗2D7抗体を添加し,48時間後に細胞形態を観察したところ,正常の好中球やリンパ球には変化が見られなかったが,骨髄腫細胞には細胞質の空胞化が見られ,数的にも著しく減少していた。細胞死の機序についてフローサイトメトリーで検討したところ,細胞株を用いた場合と同様に,患者由来の骨髄腫細胞も抗2D7抗体によるアポトーシスが誘導された。 今後はin vivoにおける抗2D7抗体の抗腫瘍活性を検討し,2D7抗原のクローニングを行う。さらに臨床応用へ向け,より活性の高い抗2D7抗体を産生するクローンを得たのち,抗体工学の手法により抗体のヒト型化を進める予定である。
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