研究概要 |
これまでの研究において,抗2D7抗体は主にリンパ系腫瘍細胞に対し細胞傷害を誘導することが明らかになった。そこで,抗2D7抗体が認識する抗原の同定を行ったところ,HLA class Iの一部分であることが明らかとなった。HLA class Iは活性化リンパ球やリンパ系腫瘍細胞に高発現していることから,この結果は本研究で示された抗2D7抗体の選択的作用と一致するものと考えられた。 抗2D7抗体は抗原をクロスリンクするためには2次抗体を必要とすることから,2次抗体が不要でより活性の高い抗体へ改変する目的で,single-chain Fv diabody抗体(2D7-DB)を作製した。2D7-DBは骨髄腫細胞株U266やリンパ腫細胞株Jurkatに対し,単独で強い細胞傷害活性を示した。さらに,患者由来の骨髄腫細胞を用いた検討を行ったところ,同様に細胞傷害が誘導されたが,正常の血液細胞に対する細胞傷害作用は観察されなかった。 次に,リンパ系腫瘍ARH-77細胞を移植した動物モデルを作製し,in vivoにおける2D7-DBの抗腫瘍効果について検討を行った。対照群のマウスは全て50日以内に死亡したのに対し,2D7-DB治療を行ったマウスの約30%が120日以上生存した。以上の結果より,2D7-DB抗体はリンパ系腫瘍に対する抗体医薬として有用である可能性が考えられた。 今後は抗2D7抗体や2D7-DB抗体の抗腫瘍作用のメカニズムについて解析し,HLA class I抗原の役割について検討を進める予定である。さらにリンパ系腫瘍や自己免疫疾患,移植免疫などの分野において,抗2D7抗体の臨床応用へ向けた基礎的検討を行う予定である。
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