2型糖尿病のような多遺伝子疾患は複数の遺伝子さらには環境因子が絡まりあって病気の発症に関係している。世界で最初に同定された2型糖尿病感受性遺伝子カルパイン10は第15番染色体上のNIDDM3効果が付加されることにより発症リスクが増強する。我々はこのNDDM3遺伝子座にカルパイン3があることに注目し解析を始めた。そこで膵β細胞および骨格筋でカルパイン10(ヒト2番染色体)とカルパイン3(ヒト15番染色体)を各々特異的に発現するトランスジェニックマウスを作成した。先ず膵β細胞、骨格筋特異的にカルパイン10を過剰発現させたマウスを作成した。カルパイン10ノックアウトマウスに関してはシカゴ大学と共同で作成した。一方、カルパイン3欠損マウスは別グループによって既に作成されており、種々の生理学的検討を加えたが、糖関連の有意なデータは得られなかった。そこでカルパイン10過剰マウスと欠損マウスを種々の組み合わせで交配させ、「二因子(膵β細胞と骨格筋)動物」と「レスキュー動物」を作成している。膵β細胞特異的にカルパイン10を過剰発現させたマウスは、生理学的検討の結果、糖負荷時の初期インスリン分泌低下によると思われる血糖上昇がヒト同様に確認された。さらにこのマウスの単離膵島を用いて、既知のMODY遺伝子を含む糖尿病関連分子の網羅的リアルタイムPCRを施行して興味深いデータを得た。またカルパイン10ノックアウトマウスの作成にも成功しており、これの単離膵島を用いてアポトーシスにおけるカルパイン10の役割を明らかにした。また内因性カルパイン阻害蛋白であるカルパスタチン過剰発現マウスも作成し、カルパインが末梢で骨格筋量の制御に関係していることを明らかにした。
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