研究概要 |
欧米での膵臓移植の臨床成績は着実に向上しているが、脳死ドナー不足が問題となっている。我国でも臓器移植法案が成立したが、過去3年で脳死ドナーからの膵臓提供は7例のみである。将来も脳死ドナー不足は容易に予想できる。そのひとつの解決策である生体ドナーからの膵臓移植は、ミネソタ大学で111例の施行例があるが、血栓症が多く、安全性の問題がある。我々は以前より生体からの膵臓移植の臨床実施に向け、大動物(イヌ)を用いて改良型の新しい部分膵臓移植術式(脾動静脈間置同所性部分膵臓移植)を考案し、その安全性、合理性を証明してきた(Transplant Proc 28,1804,1996,Transplant Proc 30,145,1998)。 現在までに臨床生体膵臓移植は施行できていないが、次年度以降の実施を目指して、既に「臨床での生体膵臓移植の実施」を施設内倫理委員会に申請中である。 以下に実施に至るまでの準備段階として達成した今年度の業績を報告する。ドナーの膵臓は線維化のない正常膵であるため、膵縫合不全の危険性が高いと予想される。部分膵と消化管の吻合の安全性は本移植手術を成功させるキーとなる。シュミレーションの意味合いもあり、以前より臨床での膵頭十二指腸切除術後の膵消化管吻合法として進めて来た膵管嵌入法の安全性を証明し報告した(World J Surg, in press, Arch Surg, in press)。本再建法で膵頭十二指腸切除術50例以上連続して膵縫合不全の発生をみていないので、本再建法は生体膵臓移植での膵胃吻合あるいは膵空腸吻合にも安全に応用できるものと考えられる。 また、実験研究部門ではイヌを用いて生体膵臓移植を腎臓同時移植で行い、移植後のグラフト機能をモニターし、拒絶反応早期診断の手法に関して検討中である。 さらに、研究者をミネソタ大学に留学させ、生体膵臓移植の手技や術後管理などを研修中である。
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