研究概要 |
1)生体膵臓移植の膵切離・再建手技の安全性確立は非常に重要であることを考慮して、これまで一般の膵臓手術で行ってきた超音波外科吸引装置(CUSA)による膵切離や、独自に開発した膵管嵌入法による再建の安全性の検討を終了した。(World J Surg 26(2),63-69,2002,Arch Surg 137,1044-1047,2002、Hepato-Gastroenterol 49(46),1124-1129,2002) 2)生体膵臓移植のみならず、脳死や心停止からの摘出膵でも応用できる、摘出臓器の障害程度の迅速な客観的判定法を、^<31>P-nuclear magnetic resonance spectroscopyと我々が開発した二層法保存との組み合わせで確立した。(Transplantation, in press) 3)生体ドナーの臓器摘出を低侵襲で行う試みとして、腹腔鏡下脾臓温存膵体尾部摘出手技を大動物を用いて確立した。(Hepato-Gastroenterol, in press) 4)生体からの膵移植のもう一つのオプションである生体膵島移植が適応になる患者が増加して来ているので、昨年度から膵島移植の実験的研究にも積極的に取り組んでいる。分離膵島に発現する炎症性サイトカインに、脳死ドナーと生体ドナーで違いがあることを証明し、その後の膵島障害や膵島拒絶において生体ドナーの優位性を証明した。(Hepato-gastroenterol 50,1854-1856,2003,Transplant Proc, in press)また、膵島分離前の二層法保存が膵島のapoptosis抑制に有効であることを証明した。(Surgery 134(3),437-445,2003) 5)現在6名の1型糖尿病で膵臓移植適応患者(5名はすでに臓器移植ネットワークに登録済み。1例は適応申請中)が、当院において病状管理しつつ、適応する脳死ドナーからの臓器提供を待機中である。生体膵臓移植についてはすでに施設の倫理委員会で承認されており、全ての患者には細かく情報提供しているが、現段階で希望する患者はいない。
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