研究概要 |
本年度は、下述するような大きな研究成果をあげることができた。すなわち、 1.外傷後の蝸牛神経変性の経時的変化については、これまで具体的データがなかった。このような現状に対して、我々は、これまでの科研費援助によって確立した定量的蝸牛神経変性モデルに基づいて、実験的検討を行った。その結果、蝸牛神経変性は、外傷後1週間以内に完成するという新知見を得た。このことは、外傷性蝸牛神経変性に対する治療方法を確立する上で重要な知見である(J Neurosurg,97:929-934,2002.)。 2. 従来から臨床の場で用いられてきた術中の神経保護手段としての聴性脳幹反応による術中モニタリングにおける潜時変化による波形判断に関する臨床的妥当性について実験的に検討を加えた(Hear Res 173:91-99,2002.)。その結果、V波潜時延長所見に加えて、V波振幅の変化を判断基準に加えることの妥当性が証明された。 3. b FGF, nimodipineの蝸牛神経変性防止効果について検討を行い、これらの薬剤に一定度の効果があることを示すことができた(Neurol Res 24:775-780,2002;Neurosurgery,2003,in press)。 これまでの科研費援助のもとに開発した我々の定量的蝸牛神経変性モデルが、平成13年度日本神経外傷学会賞(牧野賞)を受賞した(授賞対象論文: Sekiya T, Hatayama T, Shimamura N, Suzuki S : An in vivo quantifiable model of cochlear neuronal degeneration induced by central process injyry. Exp Neurol 161:490-502,2000.)。
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