研究概要 |
本年度は、蝸牛神経中枢側axonの外傷性障害によって、ラセン神経節細胞にapoptosisが生じることを初めて示すことが出来た。この結果とこれまでの我々の実験研究から、外傷性蝸牛神経損傷による蝸牛神経変性は、necroticとapoptoticの両方のメカニズムが生じることが証明された。特に、後者による蝸牛神経変性は、前者に比較すると、より緩やかに生じるために治療の対象になりやすいと考えることができた。 また外傷性蝸牛神経変性を薬理学的に防止する試みとして、basic FGFの効果について検討を行った。その結果、このgrowth factorによって蝸牛基底回転の蝸牛神経変性を軽減できることを確認した。このことは、内耳の発生過程において、basic FGFが重要な役割を担っていることと考え合わせると興味が持たれる知見である。 また本年度は、macrophage colony stimulating factor(M-CSF)が蝸牛神経変性を防止することも証明できている(Yagihashi A, Sekiya T, et al. Macrophage colony stimulating factor (M-CSF) rescues dying auditory neurons following trauma : Morphological and functional Evidence. Exp Neurol, 2003, EXNR608, in revision)。 さらに、本研究とこれまでの成果について、中国重慶市で行われた中国脳神経外科学会において発表できたことは、学術の国際交流の見地からも意義深いことであった。
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