研究課題/領域番号 |
13557113
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉本 高志 東北大学, 総長 (50091765)
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研究分担者 |
日下 康子 東北大学, 医学部附属病院, 助手 (00292219)
斉藤 務 東北大学, 流体科学研究所, 助教授 (00302224)
高山 和喜 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (40006193)
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キーワード | 衝撃波 / 頭部外傷 / びまん性軸索損傷 / shearing injury / caviation / 高速度撮影装置 / ホログラフィー |
研究概要 |
平成14年度は前年度の研究に引き続き、頭蓋骨の水平断面モデルを用いて、頭部に高速飛翔体が衝突した時に、頭蓋内部に伝播する衝撃波をホログラフィー法により可視化したが、衝突時における頭蓋モデルの破損が撮影に大きく影響したため可視化は困難を極めた。そこで、頭蓋モデルに衝撃波管を用いて直接、衝撃波を照射しホログラフィーを施行したところ、入射した衝撃波が頭蓋内の局所において焦点を結ぶことが明らかとなった。一方、ラット大脳半球に衝撃波の照射を行うと、対側四肢に一過性の不全麻痺が出現することを前年度の研究にて明らかとしたが、本年度は、研究費で購入した脳波測定装置にて照射周囲における脳波のモニターを行った。その結果、衝撃波照射野の周囲では、一過性に脳波の僅かな徐波化が認められた。また、摘出した脳について病理組織学的な検討を行ったが、照射部位ならびにその周囲組織に、くも膜下出血、脳出血、脳挫傷などの明らかな異常所見は認められなかった。さらに、衝撃波照射前後での脳表血流の変化を、開頭したラット脳表でレーザースッペクル法により比較観察したが、今回の検討からは衝撃波照射による明らかな脳表血流の変化は認められなかった。以上の結果から、頭部に衝撃波が照射されると、頭蓋のレンズ効果により脳の局所に波のエネルギーが集約伝搬され、その結果、脳組織が器質的損傷無しに、一過性の機能的損傷を受けたことで(一種の冬眠状態に陥って)不全麻痺症状が出現したものと考えられた。近年、衝撃波による頭蓋形成や悪性腫瘍に対するドラッグデリバリー法の基礎的研究が散見されるが、今後本研究で得られた成果は、これらの新しい治療法が臨床応用される際の参考になり得るものと考えている。
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