研究概要 |
我々は悪性脳腫瘍の温熱治療を改良すべく、非侵襲的加温装置として、リエントラント型空胴共振器を用いた加温方式を考案してきた。 H13年度の研究では、加温領域の制御に関する実験的検討を行なった。試作機を改良し、リエントラント部の直径を変化させることにより、最大で被加温体の約80%程度まで加温領域を制御できることが確認できた。 H14年度は既に開発している直径120cm,高さ120cmのリエントラント型空洞共振器の側面に、臨床応用を想定して患者挿入用の円形状窓を設置した。まず三次元コンピュータシミュレーションにて、外部への漏れ電界が許容値以下であることを確認した。次に疑似物質を加温し外部への漏れ電界を計測した。挿入窓より50cm以上離れた部位での電界測定値は許容値以下であることが確認できた。これについては平成14年日本ハイパーサーミア学会第19回大会にて報告した。 更に人体形状疑似物質を加温し、温度分布を赤外線サーモカメラにて観測した。出力30Wで15分間の加温を行った結果、疑似物質中央部では4.5度の温度上昇を認めたのに対し,周辺部の温度上昇は2度以下であり、問題となるホットスポットは認められなかった。これについては平成14年電子情報通信学会信越支部大会にて報告した。 動物実験としてはリエントラント型空洞共振器の側面に設置した円形状窓からビーグル犬を挿入し、加温実験を行った。実測した漏れ電界は、やはり50cm以上離れた部位であれば、許容値以下であることが確認できた。 リエントラント加温法が臨床応用されれば、繰り返し加温が非侵襲的に行え、その治療効果が期待される。リエントラント型空洞共振器を用いた非侵襲的頭部加温法は、非侵襲的加温装置として有望と思われ、臨床応用に期待が高まるものと考えられた。
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