ハイリスク患者に対するプリオン病予防薬の開発

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13557118
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 堂浦 克美 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (00263012)
• キーワード: プリオン病 / 予防治療薬 / プリオン産生阻害 / スクリーニング / 持続感染培養細胞 / 動物実験 / 脳内感染 / 脳室内持続注入

研究概要

プリオン持続感染細胞で著効を奏することを発見しているquinolin環含有化合物、Congo red誘導体、benzothiazole環含有化合物、硫酸多糖体化合物などを基本構造とする治療薬候補化合物について、さらに市販品や製薬会社のライブラリーからビックアップするとともに、比較的単純な化合物を中心とした合成展開を行った。これらの化合物について、複数のプリオン持続感染細胞を用いて感染型プリオン蛋白の増殖・産生を阻害する効果について検討を継続した。新たにbenzothiazole環含有化合物や硫酸多糖体化合物に多数の有効化合物を発見し、特許を出願した。
一方、in vitro実験で有効性を確認した化合物について、脳内感染させた早発系の遺伝子改変マウスにおいてプリオン病予防・治療薬としての有効性を検討する研究を継続した。脳内移行性が良好であると推定される化合物のうち、特に代表的なCongo red誘導体、benzothiazole環含有化合物について検討を行い、末梢投与でも、脳組織中での分解代謝が遅いCongo red誘導体において予防・治療効果が観察された。
さらに、脳移行性の乏しい化合物のうち脳室内への持続注入により極めて優れた予防・治療効果を発揮したSPSについて、動物で脳室内持続注入の安全性を確認した後に、英国のプリオン病患者1名で実験的治療を実施した。進行期の患者であったにもかかわらず、予想をはるかに凌ぐ治療効果が認められ、副作用の出現がなく、ヒトでの優れた効果と安全性を確認した。この患者での成果と疾患モデル動物実験での成果を考え合わせると、本治療法がすぐにでもハイリスク患者の発症予防に応用できることを示している。

研究成果

• [文献書誌] Doh-ura K: "Treatment of transmissible spongiform encephalopathy by intraventricular drug infusion in animal models"Journal of Virology. (In press). (2004)
• [文献書誌] Ishikawa K: "Amyloid imaging probes are useful for evaluation and treatment of transmissible spongiform encephalopathies"Journal of General Virology. (In press). (2004)
• [文献書誌] Furukawa H: "Accumulation of prion protein in the muscle fibers of experimental chloroquine myopathy : in vivo model for deposition of prion protein in non-neuronal tissues"Laboratory Investigation. (In press). (2004)
• [文献書誌] Murakami-Kubo I: "Quinoline derivatives are therapeutic candidates for transmissible spongiform encephalopathies"Journal of Virology. 78. 1281-1288 (2004)
• [文献書誌] Ando Y: "A novel tool for detecting amyloid deposits in systemic amyloidosis in vitro and in vivo"Laboratory Investigation. 83. 1751-1759 (2003)
• [文献書誌] 堂浦克美: "プリオン病治療薬の開発"神経研究の進歩. 47. 109-118 (2003)
• [文献書誌] 堂浦克美: "脳科学研究の現状と課題 プリオン病研究の進歩"杉田秀夫、高橋清久 編集 じほう社、東京. 311-315 (2003)