研究課題/領域番号 |
13557119
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
脳神経外科学
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
河内 正人 熊本大学, 医学部, 助教授 (70178218)
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研究分担者 |
坂田 恒明 塩野義製薬株式会社, 医科学研究所, 主任研究員
生塩 之敬 熊本大学, 医学部, 教授 (20028583)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2002
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キーワード | 悪性脳腫瘍 / 電気穿孔法 / 遺伝子治療 / 脳腫瘍 / IL-12 / MCP-1 / 自殺遺伝子 / 臨床応用 |
研究概要 |
悪性脳腫瘍の臨床的な治療成績は最近10年間でほとんど変わらず、現行の放射線療法と化学療法では限界があると認識されつつある。我々は、新しい治療法としてDNAを安全かつ有効的に生体組織内に導入し発現させる方法として、生体内電気穿孔法を利用する「電気遺伝療法」を開発してきた。すなわち、この方法によって細胞レベルで悪性脳腫瘍の増殖を抑制しようと考えた。今回の研究の目的は、この電気穿孔法をできるだけ臨床応用に近づけることであった。まず、第一段階として投与するプラスミドDNAの濃度、電気穿孔における各種パラメーター(電圧、パルス幅、パルス数)、電極の形状などの条件を検討し、最適な条件を確立した。次の段階として、実際の治療遺伝子を用いて皮下腫瘍、脳腫瘍モデルの治療実験を行いその有効性を証明した。マウスを用いた実験腫瘍で、数種類の遺伝子を組み込んだプラスミドDNAを用いてそれぞれの有効性の比較検討を行い、腫瘍の治療に有効な遺伝子を選択した。この方法では遺伝子を腫瘍局所に選択的に導入できるため、腫瘍局所で免疫系を惹起させる遺伝子(IL-12,MCP-1)や、遺伝子が発現すること自体は細胞毒性を示さず、後に薬剤を投与したときに細胞毒性を示すいわゆる自殺遺伝子(ヘルペスウイルスサイミジンカイネース、ジフテリアトキシン)などの導入を試み、それぞれの遺伝子における腫瘍縮小効果を確認した。また、安全性の検討においては、マウス、ラットを使って実験を行い、皮下組織、脳組織に病理学的に副作用が無いことを確認した。また、脳組織に関しては、行動学的に安全性の検討も行った結果、電気穿孔法に起因する副作用を認めなかった。以上より、浸潤性が高く、難治性のグリオーマに対する新しい治療法として、この電気穿孔法は、安全性の高い遺伝子治療であり、臨床応用を現実化できると考えられた。この方法を実際の臨床で行うためには、ヒトに進化的に近い動物などを使った実験などによる更なる安全性の確認、導入するDNAの最終的な決定などの実験を追加する必要があり、今後の課題と考えている。
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