研究概要 |
本研究の主たる目的は,骨の機械的強度を非侵襲計測可能な物理量から推定することにある. 研究分担者の東の所属する研究所の設備が整い,ラットのμX線CT骨断層像の分解能が向上し,骨の破壊検査による機械強度データも生データが入手できるようになった.このことはデータの質の向上をもたらしたが,高感度ゆえのアーティファクトの混入も助長した.また,予備研究において,X線による計測には反映されにくい強度項目があることが確認されていた.このような背景から,本年度の研究計画は当初の予定通り, (1)μX線CT骨断層像のアーティファクト軽減 (2)強度推定精度の向上 (3)超音波による基礎計測 の3点であった.(1)については,CTの再構成原理に立ち返り,中間生成領域のサイノグラム領域において,教師なし学習による信号とアーティファクトの分離を行ったが,効果は非常に薄かった.そこで,教師あり学習に変えたところ,際立ったアーティファクトの軽減が確認された.この項目は,研究代表者の眞溪の研究室の学生の修士論文となった.今後,教師信号の生成法について研究を進める.(2)については,多重解像度解析と非線形計量に基づく強度推定を行い,これまで以上に高い相関値を得た.この項目は,国際会議にて発表を行った.(3)については,実験設備を整え,超音波の非線形伝播に基づく波形ひずみの定量化を試みた.超音波伝播は,非線形伝播による高調波の発生と,線形伝播による高調波の抑制の拮抗作用であり,これらの調停はGol'dberg数が担当している.このGol'dberg数を反映した情報の抽出について予備実験を行い,基礎データを収集した.この項目については,国内の学会で2回発表を行い,研究代表者の眞溪の研究室の学生の修士論文となった.
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