研究課題/領域番号 |
13557124
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井ノ上 逸朗 東京大学, 医科学研究所, 客員助教授 (00192500)
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研究分担者 |
小宮 節郎 鹿児島大学, 医学部, 教授 (30178371)
中島 敏晶 東京大学, 医科学研究所, 寄付研究部門教員 (50307956)
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キーワード | 間葉系幹細胞 / マイクロアレイ / 遺伝子発現 / 骨芽細胞 / RNAi |
研究概要 |
ヒト間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell : MSC)は骨、軟骨、靭帯、筋あるいは脂肪などに分化する能力を有する細胞で、ヒト骨髄液から単離・培養できる。MSCは骨、軟骨系細胞への分化能、および組織形成能を有するので、整形外科領域での再生医療への応用が期待されている。胚性幹細胞(ES細胞)と異なり成人より得ることが出来る。すなわち再生を必要とする患者本人から採取可能という利点があり、自己組織なので免疫拒絶の心配が非常に少ない。整形外科領域での再生医療を視野に入れ分化メカニズムに関する基礎データの収集が重要である。また再生医療への応用のみでなく全身骨化傾向がある後縦靭帯骨化症の発症メカニズムを伺いしることもできる。 MSCが骨芽細胞へ分化する際に発現する遺伝子を網羅的にマイクロアレイ解析で検討した。また後縦靭帯骨化症患者、および対照としてヘルニア患者、から得られた靭帯細胞において骨芽細胞系への分化に伴う遺伝子発現を検討した。後縦靭帯骨化症は骨化傾向があるので、靭帯培養細胞は骨芽細胞へ効率よく分化する。一方、骨化傾向のないヘルニア患者からの靭帯細胞は骨芽細胞への分化能は低い。 マイクロアレイ解析の結果、いくつもの遺伝子発現変化が観察された。すべての系において共通に発現上昇が見られたある転写因子(Zinc fingerを有する転写因子)に注目した。マイクロアレイ解析は定量性に欠けるので、real time PCRによるTaqMan法で定量をおこない、発現上昇が確認できた。骨芽細胞分化に伴い遺伝子発現が上昇する遺伝子なので、分化に重要な役割を果たすことが期待できた。遺伝子発現を抑える目的で21塩基の二本鎖RNA(RNAi)を2ヶ所で作成し、リポフェクトアミンでMSCへ取り込ませた。結果、効率よく転写因子発現抑制がRT-PCRにより確認でき、同時にalkaline phosphataseの上昇をマーカーとした骨芽細胞への分化は抑制できた。次にC2C12細胞で発現増強させたところ、骨芽細胞への分化促進が観察された。これらの結果は、この転写因子が骨芽細胞分化に重要な因子であるのみでなく、後縦靭帯骨化症の治療の標的となりうることを示している。
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