研究課題/領域番号 |
13557147
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
柴田 実 新潟大学, 医歯学総合病院, 教授 (50196432)
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研究分担者 |
坂村 律生 新潟大学, 医歯学総合病院, 助手 (90322106)
遠藤 直人 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (10251810)
上出 利光 北海道大学, 遺伝子疾病制御研究所, 教授 (00160185)
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キーワード | カニクイザル / 同種手の移植 / 免疫抑制剤 |
研究概要 |
前年度までに、カニクイサルを購入し、CD抗原の発現状態を測定とうに準備をするとともに、ラットを用いた予備実験も加え、ウィルス遺伝子導入を利用した選択的免疫寛容療法によりサルを用いた手の移植実験の遂行のためのプロトコールの整備を鋭意、検討したが現時点でFK506などを主体に用いた比較的強力なpreconditioningが不可避という結論に達し、まずヒト同種移植プロトコールの免疫抑制剤3剤併用投与法を用いることに変更した(前年度報告済み)。 平成15年5月28日カニクイザルNo.298(F:雌)、No.298(M:雄)の右手を清潔操作下に前腕部遠位で切断し、交換移植を行った。橈骨・尺骨の骨接合、伸側、屈側の腱・筋を縫合した後、動静脈を吻合した。296(M)の手を298(F)の前腕に移植した組み合わせでは血行再開が得られたが、もう一組の298(F)の手を296(M)の前腕に移植した組み合わせでは血行再開ができず、296(M)は堵殺した。298(F)に対し、免疫抑制剤3剤を手術当日より経口によりFK506は20mg/kg, MMFは20mg/kg、ステロイドとしてメドロール2mg/kg摂取させることを目標とした。術後、1週ごとに全身麻酔をかけて移植手の状況の観察、移植手およびレシピエント皮膚を部分採取し、組織標本とした。また血液を採取しFK506のトラフ値を測定するとともに、MLRならびに各CD抗体を用いてFACSにより免疫状態の変化を追跡した。本例では免疫抑制剤を経口投与としたが動物個体により薬剤入り食物を安定して摂取させることが困難であり、FK506のトラフ値は1週ごとの経過で6.5、0.5以下、15、28、7.4、5.6ng/mlであり、特に重要な術後早期に初期目標値の10-15ng/mlを維持できなかった。MMFのモニタリングは測定不可のレベルであった。移植手は術後1週の時点では拒絶反応の有無は明らかでなかったが2週目より徐々に移植手は柔軟性を失い、乾酪壊死化した。FACSの結果は術前、術後の比較でCD抗体価の有意な変化は認められなかった。 平成15年10月24日カニクイザルNo.299(M)、299(F)の雌雄ペア一で交換移植を実施した。血管吻合レベルを肘関節レベルにし、3剤投与を術前日に変更したがそれ以外は前回と同じ手技を用いた。No-297(M)にNo.299(F)の手移植を行ったサルでは術後一週の時点で移植手よりの出血が認められたが強い腫脹、急性拒絶現象としての皮膚所見をともなっていた。その後も免疫抑制剤入り餌の摂取が十分でなくFK506のトラフ値は4〜6ng/mlと低値にとどまり、乾酪壊死の経過をたどった。もう一方のNo.299(F)にNo.297(M)の手を移植したサルは術後3剤入り食事摂取は順調で8.9〜22ng/mlのトラフ値が得られたが術後早期の血流不全をきたし、乾酪壊死となった。 平成16年3月5日カニクイザル雌雄ペアーの交換手の移植手術を行い、現在経過観察中である。今回は術後、連日FK506を筋注投与し、術後トラフ値は33ng/mlと十分なっている。
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