研究課題
基盤研究(B)
(1)細胞培養:ヒト舌扁平上皮癌由来ZK-1細胞・MK-1細胞(高転移性)、あるいは唾液腺腺様嚢胞癌由来ACC3細胞およびACCM細胞(高転移性)、さらにヒトプロゴノーマ組織由来間質線維芽細胞OF-1を維持して、細胞外基質ECMの細胞認識機構阻害の抗がん効果への可能性を検討するために以下の実験をおこなった。(2)スラミンによるヒト由来口腔癌細胞の抑制効果:そのシグナルスラミン存在下で上記癌細胞を培養して、メタボリックラベリング法で検討したところ、インテグリン分子の細胞膜発現がFAK分子発現低下によって阻害されることライソゾーム酵素阻害によって、細胞外基質合成が見かけ上上昇するが、これは細胞によるECM捕捉障害で、このために細胞抑制が生じていることが判明した。(3)口腔癌細胞と間質細胞との共培養実験:上記細胞に間質線維芽細胞をくわえて間接・直接接触環境下で共培養をおこなった。間接共培養ではトランスウェルで分取し、直接共培養ではレーザユニットを装着した顕微鏡下で二種細胞群の選択的に回収して、RT-PCR法によって遺伝子発現レベルの経時的変化を決定した。共培養下では扁平上皮癌細胞の増殖は強調され、ECM生合成が間質細胞で増強される傾向が明らかとなった。(4)スラミンによるヒト由来口腔癌細胞の抑制効果:スラミン存在下で上記癌細胞を培養して、メタボリックラベリング法で検討したところ、インテグリン分子の細胞膜発現がFAK分子発現低下によって阻害されることライソゾーム酵素阻害によって、細胞外基質合成が見かけ上上昇するが、これは細胞によるECM捕捉障害で、このために細胞抑制が生じていることが判明した。(5)DNAマイクロアレイ実験:スラミン添加条件でマイクロアレイ法をおこない、遺伝子発現の差異を検討したところ、高転移性細胞では、細胞外基質分子産生が少なく、その受容体発現も低レベルであった。さらに細胞外基質分解酵素群が高いのに対し同酵素阻害因子は低い傾向があり、アポトーシス関連遺伝子は概ね高発現していた。スラミン添加群で有意にリン酸化関連遺伝子群の発現抑制がみとめられ、細胞内刺激伝達経路の障害もスラミンによる接着抑制現象に関与することが示唆された。以上の結果より、口腔癌細胞の増殖には細胞外基質とのクロストークが重要で、その阻害は抗癌作用となることが判明したので、細胞外基質を機軸とした臨床応用の展望がひらかれた。
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