研究概要 |
我々は血管内皮細胞上に発現するケモカインであるfractalkineのreceptor (CX3CR1)を世界に先駆けて同定し,CD14+単球CD16+NK細胞,CD8+T細胞上に発現していること,およびfractalkineが従来のケモカインと異なり接着分子として作用することを報告した.今回,fractalkineのNK細胞に及ぼす効果およびNK細胞と血管内皮細胞との接着や内皮傷害におけるfractalkineの関与を検討した.さらに,NK細胞活性化における細胞膜ラフトの重要性について検討した. 1)可溶型fractalkineはfibonectinやICAM-1に対するNK細胞接着を増強した. 2)fractalkine遺伝子を導入した血管内皮細胞は,NK細胞との接着を増強した. 3)fractalkineは濃度依存性にNK細胞の顆粒放出を増強し抗腫瘍細胞殺傷能を増強した. 4)NK細胞はfractalkine発現細胞を著明に殺傷した. 5)fractalkineによるNK細胞の活性化により,INF-γ産生が著明に増強した. 6)NK細胞上のCD2分子はラフト上に存在した. 7)NK細胞と腫瘍細胞との接着面にCD2の凝集とラフトの凝集が認められた. 8)ラフト破壊作用を有するmethyl-b-cyclodextrinを作用させることにより,NK細胞の腫瘍殺傷機能が著明に抑制された. これらの結果は,炎症反応により産生されたサイトカインで活性化した血管内皮細胞がfractalkineを発現し,NK細胞の接着増強を誘導し,組織中への遊送を増強していることを示している.遊送したNK細胞はfractalkineにより活性化され,抗腫瘍殺傷能が亢進している.このメカニズムを応用することにより,fractalkineによる腫瘍周囲へのNK細胞や細胞障害T細胞の集積を誘導し,養子免疫法の効率を向上させるが可能であろう.NK細胞の腫瘍殺傷機構に,細胞膜上のラフトは深く関わっている.このラフト機能を増強する薬剤は,養子免疫療法を増強させる可能性がある.
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