研究課題
基盤研究(B)
本研究の目的は、研究代表者等が過去に行ってきた金属アレルギー治療を通して蓄積された知見を基に、アレルゲン検索の対象を金属以外の歯科材料にも広げるため、パッチテスト用の試薬を開発すること、およびその基礎的な背景を検索することであった。1.現在使用されている各種歯科材料の単一成分を抽出し、抗原性を調べるために、汎用されている歯科材料の成分分析を試みたが、微量成分の特定には至らず、製造業者の協力も得られなかった。そこで、臨床的には各単一成分として使用することが無いという判断の下、実際に臨床で使用する歯科材料(65名)、またはそこに含まれる単独成分(24名)を試料として、アレルギー外来を訪れた患者(89名)および健常者(10名)にパッチテストを行った。その結果、何らかのアレルギーが疑われた患者ではレジンに対して7%程度の陽性率があり、また健常者でも明らかな陽性が存在した。その他の材料や成分に対しても若干の陽性がみられ、非金属歯科材料に対するアレルギーの存在も無視できないと考えられた。2.金属アレルギー発症メカニズムの解明を目的としてプロテオミクス解析を行った。健常者2名、金属アレルギー患者3名の末梢血よりリンパ球を採取し、蛋白抽出後に2次元電気泳動を行って5者を比較した。その結果、健常者と金属アレルギー患者の間で発現に差があると考えられる蛋白が10数種類抽出された。今後これら蛋白を質量分析により同定し、より詳細な検討を加える予定である。