象牙質や皮膚などに豊富に含まれるコラーゲンなどの生体親和性高分子をホスト高分子として、必要に応じてゲスト低分子を取り込み、制御された放出を実現する方法を探る実験を訓画した。その成果に立って、象牙質コラーゲンに抗菌剤や接着に必要な成分を含ませ、意図どおりに放出する、in vitro & in situの放出実現の可能性を探った。 その第一段階として、架橋度の異なるコラーゲンモデルを、コラーゲンの基本構造を持つゼラチンからクルタルアルテヒドを用いた架橋により、種々の条件下で調製した。架橋剤濃度が高いほど、得られたモデル架橋コラーゲンの比表面積が大きく、変性温度が高くなる傾向が見られ、架橋度の増大に対応していると考えた。この試料にメチレンブルーを取り込ませ、エタノール溶液や塩溶液の添加がひき起こすゲルの収縮によって取り込んだメチレンブルーを取り出すことを試みた。 次いで、いずれも生分解性の腱コラーゲン、皮膚コラーゲン膜、酢酸セルロース膜をホスト高分子、メチレンブルー、アクリジンオレンシ、アクリフラビンをゲスト低分子として、濃度の異なるエタノールをゲル収縮剤に用いて系統的に取込/放出を定量した。その結果、酢酸セルロースでは色素の保持量が多く、コラーケンでは一旦取り込んだ色素の放出効率が高いこと、放出効率はいずれの高分子でも収縮剤濃度で制御できることが明らかになった。 この系での制御された放出は、浸透圧によるホスト高分子ゲルの収縮に伴う内部液の流出が主因と考えられる。本研究を基盤として、pHや温度などをトリガーとした高分子の体積相転移現象や、ホスト・ゲストの静電相互作用や疎水相互作用も考慮した、より高度な放出制御が設計できると期待される。
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