研究概要 |
データ収集のために歯科用CAD/CAMシステムを用いて,臨床系講座において収集されたクラウンのケースを元にレーザ計測する.計測に用いる模型は,支台歯と両隣在歯を含む3歯を分割し,可撤式のチャネルトレーに固定したものを用いた.また,対合歯との咬合状態を専用のオクルーザルレコードを用いて,口腔内で採取したものを計測模型に被せた状態で計測を行った.計測データはネットワークを通じて当教室のCAD/CAMシステム(加工機)に,既存のメールソフトを用いたデータの添付という形で送信する.使用するネットワークは,システムの設置場所に制限の少ないPHS回線による無線ネットワークを用いた. 本システムにおける計測データは両隣在歯のデータも含め平均で1.2MBとなった.この計測生データは,模型上の計測範囲すべての座標データを保持しているため,ネットワークを介して授受するには無駄が多すぎる.そこで,いったん計測器側のコンピュータで,この点群のデータの中から,必要とされる両隣在歯や支台歯のデータだけを抽出し,更にスプライン曲線のデータとして再構築処理を行うことで平均349.9kBとなり,元データの1/3程度まで減らすことができた.このデータを転送した場合,平均109.4秒で送信が完了する.更に,受け取ったデータを既存のCAD/CAMシステム上で設計し,返信が完了するまでに要する時間は,平均して180.0秒であった.最終的に完成した補綴物は,既存のCAD/CAMシステムと比べ,遜色のないものが出来上がった. これまでの結果より,臨床サイドでデータの計測後,データの転送,補綴物の設計,データの返送が終了して,コンピュータ画面上での確認が出来るまでに,約5分ほど必要となってしまうことが分かった.また,データの転送に関して,PHS回線の使用状態に左右され,最大で2分程度のバラツキがあった.これは,現在使用しているPHS回線のデータ転送速度,ならびに回線状況に依存しており,今後,転送速度が速くなることは,既にアナウンスされているため,あまり問題とはならないと考えられる.しかし,出来る限りリアルタイムでの処理を望むには,更に効率のよいデータの圧縮方法を検討する必要があると考えられた.また,こうした一般の公衆回線を用い,さらにインターネットのような公共のネットワークを利用する場合,セキュリティの問題についても考える必要がある.
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