研究概要 |
口腔癌に対する新しい治療法の開発を目指し、本研究では腫瘍の縮小、消出を目的とした細胞周期調節遺伝子の腫瘍への直接導入、および外科手術後の再発予防(残存腫瘍、転移病巣などへの治療)を目的としたサイトカイン遺伝子導入腫瘍ワクチンによる全身的な抗腫瘍免疫の誘導といった2つのアプロ-チによる実験を行った。 1)細胞周期調節遺伝子の腫瘍への導入 ヒト口腔扁平上皮癌細胞株HSC2,3,4の3種類の細胞株にin vitroでP53、p27,p33の遺伝子をアデノウイルスベクターにより導入したところ、p53遺伝子導入により3種類の細胞株においてアポトーシスの誘導が認められ、p27の遺伝子導入においては3種類の細胞株に増殖抑制が見られた。in vivoにおいてはヌードマウスの背部皮下に形成したHSC3の腫瘍塊の増大がp53により抑制された。また新たな抗癌剤の可能性としてプロトンポンプインヒビターの1つであるコンカナマイシンのHSC2,3,4に対する影響を検討した。コンカナマイシンはin vitroでは3種類のいずれの細胞株にもアポトーシスを誘導し、ヌードマウスの背部皮下に形成したHSC3の腫瘍塊の増大をも抑制した。 2)サイトカイン遺伝子導入腫瘍ワクチンによる抗腫瘍免疫の誘導 マウス扁平上皮癌細胞株sq1979にレトロウイルスベクターにより、IL-2,IL-4,Il-10,IL-12,TNF-α,GM-CSF, IFN-γのcDNAを導入した後に、放射線照射し細胞増殖を止め、腫瘍ワクチンを作製した。この腫瘍ワクチンをマウス背部皮下に移植し、その1週間後に親株の腫瘍細胞sq1979を反体側背部皮下に移植し腫瘍の増大を検討したところ、IFN-γのcDNAを導入した腫瘍ワクチンにより腫瘍の増殖抑制効果が認められた。
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